Precious Casket

□雨もしたたる××オトコ
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「次元?」

「…さっきから、なんかイイ匂いがすんな」

腕を引き寄せて顔を近づけると、まだ少し乾ききっていない髪には石鹸の匂いが残っていて、ふわりと鼻先をくすぐった。
いつもより血色の良い肌もつい先程まで湯に浸かっていた事を証明していたが、今素肌に触れれば五ェ門にまで冷たい思いをさせてしまうだろう。

「風呂あがりか。なら、まだ入れるよな?」

濡れて纏わりつく服がよほど不愉快なのか、次元は脱衣室まで待たずにネクタイを解き、シャツも脱いだ。
帽子も取って、ポタポタと滴の落ちるそれらを無造作にコートハンガーに引っ掻ける。

「少し湯を足せば充分だ」

「よし。じゃ、そーゆー事で」

確認をとった次元はニヤッと笑うと、大きく腕を広げて五ェ門に抱きついた。

「なっ…!?」

着物から覗く素肌が触れた途端に体温がじんわりと伝わってきたが、次元はさらに五ェ門の温もりを余すことなく奪おうと、着物の中に両手を潜り込ませてペタペタと身体を触りまくる。

「なにが『そーゆー事』だ!
 冷たいから離れろ!」

「冷たい?
 そりゃ大変だ、もう一度風呂に入り直さねぇとなぁ」

意地の悪い含み笑いを崩さないまま大げさに言ってのけると、ようやく次元の企みに気づいた五ェ門が睨みつけた。


 

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