Precious Casket

□雨もしたたる××オトコ
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その日は「一日中快晴になる」と朝から天気予報が告げていたのだが、夕刻になって急に空が曇り始めたかと思うと、大粒の雨が落ち始めた。

雨は見る間に乾いた地面を潤し、降り注ぐ水音は部屋の中にまで雨足の激しさを伝えてくる。

「…雨か。なんと気紛れな…」

窓際に立った五ェ門が外の様子を窺っていると、薄暗い夕闇が近づく中を見慣れた人影が全力で駆け寄ってくる姿が見えた。



   * * *


「――あぁ、くそっ。雨が降るなんて聞いてねぇぞ!」

泥混じりの水を跳ねあげながらアジトに飛び込んだ次元は、悪態をつきながら乱暴にドアを閉めた。
必死で駆け足を続けた甲斐もなく、帽子から革靴まで容赦のない雨の弾幕を受けて、無惨なほどにずぶ濡れになっている。

「最初から降るってわかってりゃ、おろしたてのスーツなんか着ていきゃしなかったのに…あーあー、靴まで泥まみれじゃねぇかっ」

水分で重く不快なだけとなったジャケットを身体から引っぺがしていると、物音と声を聞きつけた五ェ門がバスタオルを持って出迎えにきた。

「早く身体を拭け、次元。そのままでは風邪をひくぞ」

「お、悪いな五ェ門」

礼を言いながら次元はふわふわのバスタオルに手を伸ばし…そのまま通りすぎて、五ェ門の腕を掴んだ。


 

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