タイトル企画
□相合い傘
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「+++…」
顔を上げれば目の前にはオッパがいる。
どれくらいそうしていたのか自分でも分からないくらい、その場でじっとしていた。
向かい合うように座った彼の視線から逃れるように瞼を伏せる。
それを追うようにオッパの指先が頬へと伸ばされた。
「…いっぱい泣いた?眼、腫れてる…」
するりと滑る指先に熱を感じて僅かに擦り寄れば、それに気付いたのかもう片方の腕を伸ばしてオッパの方へと抱き寄せられる。
「…ごめんなさい」
「うん?どうして?+++は何も悪いことしてないよ」
「…オッパを責めた」
「え?ふふ、それだけで?」
やっぱり抱きしめられた身体は凄く温かくて安心感が包む。
規則的に背中をぽんぽん叩かれることが変に感情を誘って、けれどこれ以上は泣くもんかと肩口にぎゅっと顔を押し付けた。
「+++に何も説明しなかった俺が悪い」
そう続けたオッパは傍に置いてあった携帯を手に取る。
背中で操作をしたと思えば少しだけ身体を離して私の目の前に画面を見せた。
そこにはオッパと、可愛らしい女の子の写真。
「…これ、がユリさん…?」
それが彼女なのはすぐに分かった。
「うん。シン・ユリ。俺の妹」
「…えっ」
驚いて顔を上げれば随分デレデレしたオッパの顔。
「可愛いでしょ?自慢の妹なんだけどね、今まで教えなかった俺が悪いんだ。ごめんね」
小さく、小さく笑うオッパに今までの罪悪感が一気に降り懸かって申し訳なさが込み上げる。
大事な家族を相手に私はなんて感情をぶつけてしまったんだろうと。
「+++泣かないで、何も悪くないんだから。ね?」
結局またぼろぼろと泪を零してしまった私に笑いながら優しく泪を何度も掬ってくれる。
ごめんなさいと謝ればオッパは更に笑って首を横へ振るだけだった。
随分また泪を流して幾分落ち着いた頃、オッパが微かに私から離れて姿勢を正して座り直した。
何事かとそれを見詰めていれば少し照れ臭そうに笑う。
「ここ最近ユリにね、手助けしてもらってた」
赤くなってしまった鼻を隠すように片手で顔を隠せばその目の前に、小さな箱。
もう子供なんかじゃないし、その箱が持ち合わせる空気にこれがなんなのかなんてすぐに見当がつく。
「…いつか、なんて分からないけどでも。もう絶対+++以外好きになる事ないから。いつかの為の予約をさせてください」
開いた掌に乗った箱は思った以上に軽い。
「お嫁さんになってくれる?」
オッパのいない世界を想像した今日の自分が滑稽に思えた。
こんなにも想われてるなんて、オッパは昔から伝えてくれていたのに。
渡された指輪をぎゅっと握り締めて大きく頷いた。
その時のオッパの優しい笑顔は一生の宝物。
シンドンちゃんの妹ちゃんの名前は勿論空想。