タイトル企画
□傘
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温かい夢心地から眼を開くと寝室はすっかり明るくなっていて、目の前で口を半開きにしているオッパを見上げた。
シーツごと抱きしめられている事がとても温かくて、ひとつ息をついて広く柔らかい肩口に頬を擦り寄せる。
微かに身じろぎをしたオッパを見上げても、またすぐに寝息をたて始めた。
大事にされている事がちょっとしたことで感じとれることがたまらなく幸せで。
身体いっぱいに肩口からのオッパの香りを吸い込む。
外から、内から、すべてがオッパに埋もれて今なら窒息出来そうな。
パジャマ変わりのヨレヨレなTシャツの襟元を掴んで微かな隙間すら埋める。
と、枕元から僅かな振動が響いた。
振動パターンが自分の設定とは違うから間違いなくまだ夢心地の彼のものから響いている。
オッパの身体の中から腕を伸ばしそれを手探り寄せた。
仕事だったら困るからとディスプレイを開けば。
オッパのマネージャーでもない、ましてやジョンスオッパでもない名前。
『ユリ』なんて表示されたそれは、どう間違っても男の人じゃない。
ああ、でもスタッフさんかもしれない、やっぱり仕事だったら困るのはオッパだと、目の前の彼を起こそうかと思った直後、手の中の震えが止まった。
それをずっと持っていても無意味ですぐに枕元へと戻す。
その間ぴくりとも動かない姿を見詰めても答えなんて返ってくる訳もなく。
僅かに開いてしまった隙間を再び埋めて、ぎゅっと眼を閉じた。
この腕が全てだと思って。
離れてしまわないように、今まで以上に力を込めた。