タイトル企画
□待つ雨
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落ち着きなく楽屋の中で歩き回ってはソファに座ったギュヒョンに怒られる。
でもそんな事耳に入らないくらい今は気分が動揺していた。
どうしたら、落ち着けるというんだろう。
「みんな、お疲れ様〜」
のんびりした声と一緒に楽屋に戻ってきたトゥギヒョンに即座に近付く。
「ヒョン、今日あとどれくらいで終わるの」
「え、なんで」
「……」
いつもなら理由くらいなんでもなく言えるけど、今日はさすがに簡単に口に出来なくて視線を反らして口を紡ぐ。
「…んー、そうだなぁ、きっとまだまだだよ?早く行きたいの?」
何も言わない自分に理由ぐらい聞いてもいいのにそれを聞かず、更には行きたい場所を理解してくれるヒョン。
「ヒョン…ごめん」
「大丈夫だよ、そうだなぁ…次の収録だけ参加したら後はどうにかなるかな…それで平気?」
「ぁ…うん、うんっ、ありがとうヒョン!」
甘やかしすぎですよ。と後ろから冷たい声が聞こえてきたけれど聞こえないフリ!
ヒョンに抱き着いたら頭を優しく撫でられた。
今はたったそれだけで泣きそう。
早く、早く抱きしめに行きたい。
ヒョンが計らってくれて難無く仕事を切り上げる事が出来た。
カバンを引ったくるように手に取って+++の家に急ぐ。
玄関を開いても人の気配はしなくて、余計息を詰まらせた。
カバンを隣に置いて上着も着たまま、ソファに倒れ込むように座る。
しんとした空間が居心地悪く、無意識に二の腕を摩っては身体を縮こませた。
こんな不安に彼女を待つ日は初めてで、どうしていいかが分からない。
ちゃんと受け止められるか、ただ不安だけが募る。
「ぁ…おっぱ…」
感情と葛藤していると微かに聴こえた声。
顔をあげると部屋の入口に立ちすくんだ彼女の姿。
弾かれるように立ち上がってそのすぐ傍に近付く。
「+++…」
名前を口にすれば、彼女は身体を僅かに強張らせた。
その姿があまりに痛々しくて、無我夢中で身体を抱きしめる。
「おっ…ぱ」
「うん…うん」
躊躇いがちに回された腕はあまりに弱々しくて胸がきゅっと締め付けられる。
「も…っ名前、呼んで…くれな、くて…っ」
嗚咽の漏れる言葉は哀しくて、頷いては背中をただ摩る。
哀しみが伝染したように、自分の頬にも涙が伝った。
+++と初めて、こんなに悲しい時を迎えてどうしようもない気持ちになる。
ただ、今はただ、彼女が泣き止むまで時間が過ぎるのを待とう。
そうしたら彼女にずっと、傍にいると約束しよう。