タイトル企画
□ずるいから好きです
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毎週毎週、馬鹿みたいに課題を出してくる講義の消化作業を大学校内にあるカフェの隅っこで格闘していた。
まるで定位置のようにカフェに入ると空いている席に、この日も変わらず課題を広げては頼んだカフェラテを口に含む。
広げただけで気負けしそうな課題の白さに幾分うなだれて、見詰めていても何も変わらないと、とりあえず手をつけた。
全体の半分くらいを片付けた頃、集中力も切れてしまったので目をぎゅっとつぶってから背もたれにおもいっきり寄り掛かる。
伸びをしながら目を開くと、いつの間にか目の前に一人、テーブルに広がる課題を頬杖付いて見下ろしながら胡散臭さそうな笑顔を浮かべていた。
「…キュヒョン…?いつからいたの…」
驚いたあまり伸びをしたままの体勢で彼に問い掛ければその口許がもっと怪しく歪む。
それはキュヒョンが何か企んでいる時に見掛ける表情。
「…あとどれぐらいで終わりそうなの?」
けれど実際降ってきた言葉は案外普通で、正直拍子抜けした。
キュヒョンの顔を見れば表情も普通の顔に戻ってる。
「あー…あと半分くらい?」
広げたレポート用紙を捲って言えば、目の前の奴は小さくふぅん。とだけ答えた。
一口ラテを飲み込んで、キュヒョンを気にせず続きをやろうと視線を変えれば、視界の端っこで長い綺麗な人差し指がテーブルを叩く。
そういう行動が無駄に絵になるのが彼らしく、動かし始めた手をまた止めて顔を見上げた。
「頑張ってる+++にご褒美あげようか」
かと思えばやっぱり歪んだ笑顔を浮かべていて、ご褒美だという言葉を疑う。
「欲しいけど、なんか欲しくない気がする…」
素直に眉間に皺を寄せればキュヒョンは僅かに声をあげて笑った。
彼は人をからかうのが好きだと、共通の友人であるチャンミンが昔呟いていたのを突然思い出した。
まぁそのチャンミンも人の事言えた義理はないのだけど。
「……ぃよ?」
「ぅえ?」
そんな意地の悪い二人を考えている間に何か言っていたらしく、案の定聞き逃した自分はもの凄く気の抜けた声をあげた。
「…+++…聞いてなかったでしょ?」
「あーごめんごめん。悪気はないよ?」
随分責める声を出したくせに、私の謝罪は「ま、いいけど」と軽くスルーされる。
なんなんだ。と少し睨めばまたテーブルに頬杖をついて、滅多に見せないような優しい笑顔を突然浮かべた。
「きゅひょな…?」
「その課題、次の講義が終わるまでに終わらせたら、+++の彼氏になってもいいよ?」
「…は…?」
あまりに突然、突拍子もない台詞。
更には私の返事も聞かず席を立つキュヒョンの名前を呼べば、すらりとした身長を前へと倒しまるで子供みたいな軽いキスを落とした。
「彼氏になれないから早く終わらせて?」
まぁ、彼氏にならなくていいならいいけど。とまた口角を歪めてキュヒョンは講義を受ける為にカフェから出ていく。
結局、課題が終わったのはキュヒョンがまたここに来る数分前だった。