タイトル企画

□きっと夢中にさせるから
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真横から入る夕日に染まった店内。

静かな空間であるはずのそこは、一瞬にして一変した。

それは目の前にいるこいつのせい。

「+++が好きなんだ」

それだけ告げて、仕事だからとさっさと店を出て行った。

それまで全くそんな素振りを見せなかったもんだから、突然の事に頭がついていかず、出て行ってしまった扉をじっと見詰める。

「…大丈夫?+++ちゃん」

ぼやっとカウンターに立っていたら奥から出て来たオーナーに笑われてしまった。

いつも私達を見ていたオーナーに事を話すと更に笑って、やっとか。とだけ零してまた後ろへ下がってしまう。

『やっと』と言うのだからきっと前からオーナーはあいつの気持ちに気付いていたんだろう。

ああもう、なんで突然こんな。

盛大に溜息をついて、洗い物に手を付けた。

それからあいつはぱたりと来なくなって、喫茶店は毎日平穏な時間だけが過ぎて。

気付けば一週間も経っていた。

「+++ちゃんお疲れ」

「お疲れ様です」

閉店後の店内掃除をしていればオーナーは声を掛けて先に帰っていった。

一人残った店内はがらんとしていて、数時間前に溢れていた音もなくただ静かに時計の秒針が進む音だけ響いている。

「結局今日も来ない…」

また姿を見せない日が一日増えた。

女々しく思ってしまった自分にやるせない気持ちが押し寄せてその場にしゃがみ込む。

何を、そんな気にしてるんだか。

「穴があったら入りたい…」

顔が熱くなるのを感じて両手で頬を挟んだ。

「…なにやってるの…?」

ふと自分以外の声に驚いて勢い任せに上を見上げれば。

「ドンヒ…」

「うん?」

何故か突然来なくなった姿が目の前に居た。

いつもと変わらない優しい笑顔にどこかほっとして、情けない声でドンヒの手を引く。

「今日も遅くまでお疲れ様」

伸ばした手を嫌な顔ひとつせず握り返して、更には反対の掌で髪をくしゃりと撫でられた。

それが心地好くて眼を閉じて全て受け入れていれば、ドンヒが目の前におなじようにしゃがみ込むのが空気で感じ取れて。

うっすら瞼を開けば、ドンヒにしては珍しく意地の悪い笑顔を浮かべていた。

「+++…俺の事気になってる?」

ぽつりと落とされた言葉にあの日を思い出して、また顔に熱が集まりだす。

何も言えずにただ視線を下げればドンヒはくすくすと笑った。

「もっともっと俺を気にしてよ」

それはなんだか甘い響きに聞こえて。

ドンヒの掌を離したくないと、思ってしまった。







 

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