タイトル企画
□この恋 きみ色
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『+++、おはよ』
「んー…おはよぉ」
『まだ眠そうだね』
ベッドの上に座り込んで携帯片手に眼を擦れば、耳元から優しい笑い声が聞こえてくる。
ボサボサの髪の毛を手でそれなりに撫でれば相手はそれを分かっていたのか『今日も沢山はねてるんだね』とまた小さく笑った。
「リョウクは今日お仕事?」
ベッドの下へ足を投げ出して窓の外を見ればまだまだ朝日は頂点まで随分遠い。
それなのに私の耳元へ届く声はハッキリしていて、彼が目を覚ましてから時間が経っている事を安易に知らせた。
自分より年下だというのにしっかりした子だと思う。
『うん、もう少ししたら宿舎出るんだ。準備終わって時間があったから電話しちゃった』
ごめんね?と申し訳なさそうに謝るリョウクの声に次はこちらが笑みを浮かべた。
彼からの電話で起きた事を申し訳なく思っているのだろう、そんな事、塵も思っていないのに。
寧ろ、
「起きて一番にリョウクの声が聞けるなんて、私は嬉しいよ」
ふわふわと優しいリョウクの声がとても安らぐから、きっと今日も一日お仕事頑張れそうで。
『ふふ、+++ありがとう。あ、もう行かなきゃ』
電話の向こうで集合をかける声が聞こえる。
きっとイトゥクオッパがメンバーを呼び集めてるんだろう。
皆早くから頑張るなぁ。なんてリョウクとの電話を惜しんでいれば、彼が短く私の名前を呼んだ。
『また後で電話していい?』
「…大丈夫なの?」
『うん、休憩時間とか、待ち時間とか、どうにでもなるから』
そっか。なんて返事すればリョウクは電話の向こうで微かに笑ったのが分かった。
「待ってるね。私も出来る限り電話出る」
『僕+++の声聞いてないとダメだから。絶対出て?』
約束ね。と急かすオッパの声に紛れたリョウクの声。
電子音しかしない電話をぎゅっと握り締めて耳元を指先で覆った。
あんな優しい声、朝から聞かされて一日平常心でいられる訳がない。
早く、休憩時間になればいいのに。
電話だけじゃなくて、今すぐ逢いたいよ。