タイトル企画2

□カラメルに絡めて
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こういう時自分の腑抜け具合に頭を抱えたくなる。

先輩から渡された両手で抱える程の紙の山をどこをどうして廊下にぶちまける奴がいるんだろう。

いや、それは間違いなく私なんだけども。

見るも無惨に散らばった書類達をしゃがみ込んでしばらく見詰める。

けれど何が変わるでもない現状に頭を抱えていた手を離して、足元の書類から手を伸ばす。

いつもだったら色んなスタッフやそれこそ事務所に出向いてるアイドル達が廊下を右往左往してる筈なのに、こういう時に限って人っ子独り通らない訳で。

見事なまでの書類の海をとりあえず一つの山にして抱え直す。

立ち止まってしまった廊下を再び進んで上の階にある会議室へと運んだ。

「…+++、もしや落としたの?」

バラバラと人が集まりだす中、先輩が一番上の紙を手に取って私を見る。

「…ごめんなさい」

言い訳も出来ないし、寧ろ言い訳する材料も持ち合わせていないしでただ素直に謝る。

「ほんと、おっちょこちょい」

よれよれになってしまった書類片手に口元隠して笑う先輩。

これ以上言うなと釘を刺して、次にありがとうと呟いた先輩にお辞儀だけして会議室を後にした。

廊下に出て間もなくきゅるーっと鳴ったお腹に思いっ切り溜め息を吐き出して、お腹をさする。

「…盛大に鳴ったねぇお腹君。もうお昼か」

腕時計に視線を落として見れば、12時を少し過ぎたところで。

このまま食堂行こうかなとエレベーターホールへと続く角を曲がる。

「…あ、」

「?」

ホールの一歩手前。

壁に寄りかかって立つ男の人。

明らかに私の方を見て壁から背中を離すから、無意識に立ち止まってしまった。

無表情にこちらを見詰めながら近寄って来る姿をじっと身構える、と。

「わ…!」

目の前までやってきて何を言うでもなく右手を取られる。

突然の事に逃げ腰になりながら並ぶと意外と背の高い目線に上げられた右手を見てると、それまで無表情だった彼の表情が崩れた。

「良かった」

「え?」

主語もない彼の台詞に疑問符だけが浮かぶ。

ポケットを漁りだした彼に離された手を戻していいかと引こうとするとまたそれを取られる。

「指、切れてる」

一枚の絆創膏を取り出して中指の指先の方へそれを巻き付けた。

いつ切ったのか知らないし、なんでそれをこの人が?と怪訝な顔で彼を見上げると、彼が微かに首を傾げる。

「さっき書類拾うの手伝えなくてごめんなさい」

手が離せなくて。と続けられた言葉に合致がいく。

「…見られてたんですね」

恥ずかしい…。

何もないところで盛大にばら撒いた瞬間を見られてたなんて。

「傷気付かなかったんですか?」

「自分の腑抜け具合に落ち込んでたもんで」

少し自棄気味に答えるとそうですか。と彼が初めて小さく笑った。

「……!」

「突然ごめんなさい。失礼します」

礼儀正しく深々とお辞儀をして私を追い越して行こうとする背中を無意識に掴んでいた。

「SUPERJUNIORのシンドンさん、ですよね?」

止めさせてしまった足を申し訳なく思いながら、驚いた顔を見せる彼をじっと見詰めると背中を掴んだ手をシンドンさんの手に取られる。

「そうです、シンドンです。ふふ、知ってたんですね」

片方の手先だけを両手できゅっと握られた。

それからふにゃりと笑った彼との出逢い。



 


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