タイトル企画2
□スキ
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『みんな大好き〜』
表舞台から響く声に顔を上げた。
声だけで誰が漏らした言葉か分かってしまった自分が恥ずかしい。
ごまかすように一瞬止めてしまった脚を再び動かした。
曲の合間合間に会場に集まったファンの子に愛を伝えるドンヘ。
それがドンヘの良いトコロでもあるけれど、片想いしてる身としては、少し妬ける部分でもある。
荷物を抱え直して長い廊下で一人、盛大なため息をついた。
いっそ、私もドンヘペンですとでも言えばいいのかな、なんて下らない想像に笑ってしまう。
ステージ脇に荷物を起きにくれば、ソロステージの順番待ちでステージからはけてきたドンヘが居た。
こちらに気付くと頭にタオルを被ったまま走り寄ってくる。
「+++ヌナっ」
わんこか。と言いたい程の笑顔で近寄っては抱き着いてきた。
どこまでも嬉しそうに歯を見せて笑うドンヘに、さっきのもやもやした気持ちもなんだかどうでもよくなって。
「ヌナー今日楽しいんだー」
背中に回した掌でトントンと軽く叩いた。
「E.L.F.ちゃんは可愛い?」
僅かに身体をずらして見上げた彼は一瞬きょとんと眼を丸めて。
すぐにくしゃりと破顔させて笑った。
「うん、大好きっ」
いつか、いつかその誰彼にも向けた好きが私に向いてくれるなら。
「へへ、ヌナも好き〜」
今は、これで充分。