べるぜバブ
□思い出してはまたひとり嬉しくなるの
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「あーあ…」
がっくりと肩を落としてカブトムシの飛んでいった方を眺める。
その時、不意に背後から声がかかった。
「やあぼく、虫捕りかい?」
びっくりして振り返ると、3・40代と思われる小太りの男がニコニコ笑ってこっちを見ていた。
「うん、でも今デカいカブト逃したんだよ」
「それは残念だったなあ。
でもおじさんはこんなに捕まえたよ」
そう言って男が持ち上げた虫かごには、大量のカブトやクワガタが入っていた。
「すげー!これ全部1人で!?」
「そうだとも。
あっちにおじさんの家があるんだけどね、そこにはもっと大きいものが沢山いるよ?」
「まじで!?
見たい!」
まだ無垢で人を疑うことを知らない古市は、目を輝かせながら言った。
「ああ、いいとも…」
男が醜く笑ったことにも気付かずに、古市は男の後についていった。
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