ただ、君だけに愛を捧ぐ

□終わりの始まり
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ほんの少しだけ昔、それは余りに切なくて、悲しくて愛しい話。
それは春と共にやって来て、春と共に終わるー。



冬が終わり、桜のつぼみが膨らみ始めた春先の事、一人の男が病にかかった。
男の病は酷く重たいもので、体の機能を少しずつ低下させていくものだった。
ただゆっくりと死んでゆく体に、恐怖と不安をもって生きていくしかなかった。

そうして、何もかもに絶望した男は、自分自身を見失い、周りに言われるがまま、男のもつその病気の治療で国でわ最も優秀とされる医師がいる病院に入院した。



「久島 冬次さん4番お入り下さい。」

伸びのある綺麗な声でナースが俺の名をよぶ。

「え、…ぁ、はぃ。」 

ボッーと考え事をしていた俺わ、少し急ぎで指示された部屋へ向かう。

スリッパと床のぶつかりあう独特な音と共に、無駄のない白いドアを忙しくぬける。

そして入った先でいかにも高そうなペンを使い、お世辞にも綺麗と言えない字をサラサラと紙一面に書く老人に声をかける。


「こんにちわ…。」
               
 

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