短編
□Present of lover
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冬休みが終わって、早数日が経ったある日の事。
既に朝日が顔を出しているが、一向に暖かさが感じられない。
「…くしゅんっ!」
短いスカートで隠し切れない白い素肌の上を、真冬の冷たい微風が滑るように吹き流れた。
いつも早く家を出てからまだそんなに時間は経っていないのに、もうすっかり体が冷え込んでしまったためか、自然とくしゃみが出てしまった。
桜乃は小さく溜め息を漏らした。
暖かそうなピンクの手袋を嵌めた両手を口元に近づけると、深く息を吐いて、体の熱を温存させる。
――今日も寒いなぁ…。
冷気で息が白く変化する。
腕を交差させ、何度も両手で袖を擦りながら、桜乃はガクガクと小刻みに震える足でゆっくりと学校に向かって歩き続ける。
すると、
「お〜い、桜乃ー!」
「あっ朋ちゃん!」
名前を呼ばれて、ふと足を止めて後ろを振り返ると、二つのツインテールを揺らしながら、大きく手を振ってパタパタとこちらに走ってくる朋香の姿があった。
ようやく追いついた所で、朋香はゼェーゼェーと両膝に手をついて乱れた呼吸を落ち着かせる。
「おはよう、朋ちゃん。大丈夫…?」
「ハァ…ハァ…へ、平気よ。これくらい!桜乃が見えたから、ずっと走ってきちゃったからさ…あはは」
「有難う、朋ちゃん。でも、ごめんね」
「何謝ってんのよ!桜乃ったら!あんたは本当に何でもお人よしなんだからッ!」
朋香は親友の背中をバンッと軽く叩いて、ニッと優しく笑みを浮かべた。
叩かれた反動で、桜乃は少し前のめりになりながらも、何とか体勢を持ちこたえた。
ゴメンゴメンと胸の前に両手を合わせ、舌を出して謝ると、突然何かを思い出したのか、朋香はバッグから何かを取り出すと桜乃の目の前に差し出した。
「ほぇ…?」
「はい。誕生日おめでとう、桜乃!」
「わぁ…有難う!朋ちゃん!覚えててくれたんだぁ」
「当ったり前じゃない!大事な親友の誕生日を覚えてない人なんて、いないわよッ!」
――1月14日…
竜崎桜乃の誕生日――。
忘れてた訳ではなかったが、今こうして心から誕生日を祝ってくれる朋香の優しさに、桜乃はとても嬉しくなり、最高の喜びを実感できた気がした。
そして手渡されたプレゼントを受け取り、大事そうに腕の中に抱える。
桜乃に合わせて丁度いい大きさで、色はピンク色の袋で綺麗にラッピングされていた。
『誕生日おめでとう!
これからもずっと親友よ!
Dear My best friend...
by.小坂田朋香』
また赤いリボンの切れ端には、素敵なメッセージが貼付けてあった。