頂き物
□by.霞様
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終わりなきエピローグ
空港にて。
手荷物一つだけで帰国した、“世界一のプロテニスプレイヤー”を待っていたのは…残酷にも、日本の記者たちだけであった。
「越前選手!世界ランク1位、おめでとうございます!」
「一言!一言だけでもお願いします!越前選手!」
「日本滞在期間はご自宅で休まれるんでしょうか!?どうなんですか?越前選手!」
記者たちの必死さは手に取るように分かる。
少しでも多く“世界一のプロテニスプレイヤー”という存在のデータを手に入れようと…皆、必死なのだ。
しかし、“世界一のプロテニスプレイヤー”はかなり無愛想な人物だった。
彼は決して人とは慣れ合おうとしなかった。
彼と口を利けるのはマネージャー程度。
同年代、年上、年下関係なく…彼に近付けるような親しい人物はほとんどいなかった。
それは昔からそうだった。
…何故なら、彼にはそんなものは必要がなかったから。
幼い頃から“世界一のプロテニスプレイヤー”になるべく、厳しい練習を積み重ねてきた彼にとって、親しい人物など必要ない。
必要なのは、自らの身体と…ラケットとボールだけ。
…他には何も要らない。
そう、何も要らないのだ。
だから。
「日本滞在中は一切取材拒否するって言ったはずだけど?…それでも俺の顔撮ろうって言うなら、契約違反で訴えてやってもいいよ?」
彼は冷酷な瞳で記者たちを見据える。
その場は一気に静まり返り…誰一人として、ぐぅの音も出ずに立ち尽くしていた。
“世界一のプロテニスプレイヤー”こと“越前リョーマ”は、記者たちの反応に気を良くし、そのまま出口の方向に歩き出した。
そして去り際に一言。
「Bye...」
そして、彼の姿は東京のどこかに紛れて消えた…