ハリーポッター

□噂は所詮、噂。
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「痛い…」



階段を踏み外したせいで足を挫いてしまった。


立ち上がろと力を入れてみるが、痛くて立ち上がれそうにない。



「どうしよう…」



静かなホグワーズで私の呟きだけが響いて、何だか世界に1人だけ取り残されたような錯覚に陥る。


不安や焦りで胸が締め付けられたように苦しくなった。


泣きそうになるのを必死で堪えてると、私の方へ向かってくる足音が聞こえてきたので顔を上げる。



「…何、こんな所にしゃがみこんでるんだ。邪魔だぞ」

「っ!」



私の前に立っていたのは、スリザリンのローブを纏ったプラチナブロンドの冷たい瞳をした男の子だった。
一目で分かった。

彼はドラコ・マルフォイだと。



「うぅ…」



知っている人(噂で聞いたりして一方的だけど)に出会えたことに安堵して、気が付けば私は泣き出していた。



「お、おい!泣くなよ。僕が泣かしたみたいじゃないか!」

「うぅ…」



ドラコは突然泣き出した私に驚いて慌てている。


泣き止まなきゃ、と思いながらも涙は止まらない。



「あ、あの…」

「何だ?」

「足…挫いちゃって…」

「はぁ?」



ドラコが私の足首を見て眉間にシワを寄せる。



「…立てるのか?」

「えっ?」

「医務室、行くだろ?」

「えっ、あっ、立てません…」

「はぁ…ほら、手出せよ」



ドラコが私に手を差し伸べる。


あの、ハリー達を苛めて楽しんでるドラコが、見知らぬハッフルパフ生の私に、だ。


恐る恐るドラコの手をとり立ち上がる。



「痛っ…」

「大丈夫か?」

「平気、です」

「じゃあ、歩くぞ」

「うん…」



静かな廊下に2人の足首しか聞こえない。


会話もなく、気まずい雰囲気が漂う。


何で、ドラコは私を助けてくれたんだろう…


ドラコが1番馬鹿にしているマグルのハッフルパフ生の私を。



「…おい」

「は、はいっ」

「着いたぞ」

「あっ…ありがとうございましたっ!」

「あぁ…あそこで泣かれて僕のせいにされても困るからな」



プイッと照れ臭そうに言うドラコ。


発せられた言葉は頭にきたが、ドラコからしてみれば照れ隠しの為の発言だと分かったし、理由が何であれ私を助けてくれた事には変わりない。


「本当は優しいんだ…」

「ん?何か言ったか?」

「いえ、何もありません。…本当にありがとうございました」




『 噂は所詮、噂。』




「…仲良くなれたら良いのになぁ」



ちょっぴりドラコの優しさに触れられたある日の午後の出来事。





End

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