駄文

□≠ omoi afterstory
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「ほら!朝だよ!起きんかい!!」


合宿最終日の今日も朝は竜崎スミレ先生のありがたい怒鳴り声で幕をあけた。
テニス部メンバーからしたらまったくありがたくはないだろうが仕方ない。

疲れが抜けきっていないのか、レギュラー陣は起き上がっても上の空だった。

続々と布団が片付けられる中、一つの布団だけが残る。


「その布団は誰のだい!?」

「越前のです」


大石の言葉にスミレはがっくりと肩をおとした。


「リョーマはこんなんだから毎日毎日朝練に遅刻するんだろうに」

「起こします!」


リョーマの布団に大石が駆け寄った。
スミレはそれを片手で制し、自らリョーマの布団へと赴くのだった。

これから何が起きるかわかる一同は苦笑い。

スミレがリョーマの布団に向かってあらんかぎりの声で怒鳴った。


「リョーマぁぁああ!!!!いい加減起きんか!」


次の瞬間全員が息を飲むことになる。
リョーマの布団から顔を出したのは桜乃だったから。


「桜乃!?」

「お、おはよ。おばあちゃん」

「なんで桜乃がリョーマの布団で寝てるんだい!?」


もっともな疑問である。


「えっと、これは、その…」

「越前に身代わりを頼まれたんだよね?」


助け船を出したのは不二だった。
それが嘘なのは桜乃にはもちろんわかっていたが不二の話しに便乗する。


「そうなのおばあちゃん!リョーマくんに頼まれて!」

「一体何をだい?」


またまたごもっともな疑問。
桜乃の頬が引き攣る。


「越前の奴、ポンタでも買いに行ったんじゃねぇスか?」


桃城も助け船をだす。
ぱっと表情を輝かせる桜乃にウィンクも飛ばして。


「リョーマくん、ポンタ飲みたかった見たいで買いに行ったの。でもみんな起きたときにリョーマくんがいなかったら買いに行ったのバレちゃうから私が身代わりを頼まれたんだよ」


桜乃が一気に捲し立てる。

「桜乃ちゃんと越前って身長とかも変わらないしね」

という不二のフォローなのか皮肉なのかわからない言葉もスミレを着々と納得への道に導いていた。

はずが


「でも確か越前は早起きが大の苦手じゃなかったか?」


海堂の台詞に桃城、不二、桜乃の三人の表情が凍りついた。

こんなところに伏兵が!?



「海堂の言う通りあのリョーマが早起きなんてのぉ」


マズイ!


「なぁに言ってんすか。越前のポンタ好きはすでに病気っスよ?」

「リョーマくん、いつだってポンタ飲んでるし」

「越前にはポンタが飲めないこの合宿は拷問に近かったのかもね」


すかさずフォローだが海堂も


「けどおかしくないスか?」


不二開眼!!

「おかしい?海堂、君は何を言ってるのかな?何にも、そう、なんにもおかしくないよ、ねえ海堂?」


口調は優しい。
だがその目は今にも未知のパワーで本物のヒグマを落とすと言わんばかりに威圧的だった。


「おかしくないよね海堂」

「うぃす」

「まぁいい。じゃ支度し次第食堂にくるように」

「うぃーす」


スミレが扉を閉める。
きっちり3秒の間を置いて手塚が口を開いた。


「結局、越前はどこにいるんだ?」


どうやら三人がかりのフォローもこの部長には見破られていたらしい。
これには不二も苦笑い。


「越前は、ここだよ」


不二が桜乃にかけられた布団を捲る。

そこには桜乃を抱き締めながら幸せそうに眠るリョーマの姿があった。

手塚は表情を変えない。


「よかったね、桜乃ちゃん。越前と仲直りできて」

「はい。でもリョーマくん寝てるのにさっきから全然離してくれなくて」

「それは困ったね」


まったく困って無さそうに不二が言った。
むしろ楽しそうである。


「…ん…ぅ」


リョーマが身動ぎする。


「りょりょりょりょりょリョーマくん!?」


リョーマは顔を埋めていた。
桜乃の胸に。

桜乃の声にならない悲鳴。



「…んぅ…りゅ…ざき?おはよ」

「おはよ、リョーマくん。じゃなくて!」


起きたのになんで顔を埋めるのやめないのぉ。


レギュラー陣は何も言わなかった。
というか言えなかった。

海堂や桃城、大石の顔は真っ赤で。
不二と菊丸と乾はとても楽しそうで。
河村は苦笑いで。
手塚はやっぱり無表情だった。


「昨日はよかったね、越前」

「起きてたんスか?」

「おめでとう」

「なになに?何の話ししてるのさぁ!」

「ふふっ」

「盗み聞きなんて悪趣味っスよ」


それより、と桜乃が割って入る。


「リョーマくん…、あのぉ」

「いいね、これキモチイイ」


にんまり笑って顔を胸に擦り付ける。


「りょりょリョーマくんの、リョーマくんの」

「なに?」

「ばかぁ!」


ばちん


リョーマの頬には綺麗な紅葉が咲いたのでした。
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