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俺、沢田綱吉は教卓の脇に立つ黒髪の少年に、何処か目を奪われる思いがした。
7月中旬。
梅雨もすっかり明けた、新緑茂る初夏の季節。
こんな中途半端な時期に現れた転校生に、クラス内は酷く騒然としていた。
綾瀬零、それがこの彼の名前だ。
黒髪を無造作に流した、何処と無く鬱屈とした少年。
黒板に自分の名を書いて振り返った彼は、何故だか俺の顔を見て、少しだけ安堵した様子を見せた。
それも、ほんの一瞬の事だったけれど。
『綾瀬零だ。…宜しく』
そう素っ気無く言って席に着く彼に、女子達は何かクールで格好良いかも、と色めき立ち、
男子達はそんな女子達の様子を見た途端、転校生にジト目を向けた。
俺はそんな綾瀬零君に、突然屋上に呼び出されたんだ。
何これ、転校初日からリンチのお知らせ!?
そうあらぬ事を想像して背筋を震わせた俺の予想を、この目の前に立つ彼は180度、いやそれ以上越えていた。
「な、何の用?こんな俺に…」
『…君、沢田綱吉で間違い無いんだよな?』
「え?あ、うん。そうだけど…」
すると、彼の紅い瞳に…一筋の光が差し込んだのが見えた。
そして、それでも無表情を崩さない彼は、真剣な顔をしてこう告げた。
『出会って早々悪いが。沢田、一つ頼みが有る』
「え、な、何かな?」
『俺に…
…少し君の血を分けて欲しいんだ』
「はぁああああああ!!?」
初対面は最悪で
(それでも、彼の瞳がとても綺麗な事だけは、俺の記憶に刻み付いていた)
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