short Dream

□迷うことなんて何もない
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「迷うことなんて何もないですよ…」


透き通るような男の声が響く一室で二人は佇んでいた


一人は銀髪紅眼の男


もう一人はその男にすがるように抱き付いた女


窓の外はすでに闇


空には綺麗に月と星が浮かび上がっていた


「ワタシならきっと君を守って行くことができる…


ワタシならきっと君の力になってあげられる…」


そんな暗い部屋で男は優しく女を抱き締めながら呟き続けた


強く、優しく


男は何度も何度も囁き続けた


彼の目の前にいる女の身体はすでにフラフラであった


それでも女はどこかほんのり微笑んだ様子で男にしがみついていた


「……ブレイクは私のことが好き?」


まるで話が噛み合ってないかのように彼女は突然男に問い質した


視線は男の胸の辺り


決して視線を合わそうとはしなかった


「………愛してます…こんな言葉だけじゃたりない程に…」


男は女の表情が見えないと知りながらも彼女にそっと視線を向けていた


片方しかない紅い眼で…


「……ブレイクなら私を受け入れてくれる?」


女の視線はやっぱり下


一瞬、男の背中に回された細く白い女の腕が震えた


それを感じとって男は片腕で女の頭をも自分の方へと抱き寄せた


「もちろんですよ…」


「苦しいよブレイク…」


クスッと小さく笑って女も巻き付けた腕に力を入れた


「本当に…?」


「だから何度も言ったでしょう?」










君が迷うことなんて何もない











「ワタシと一緒に最期までいましょう?」


囁くように


呟くように


でも力強く


男は女がコクリと頷いて視線を上げたのを見計らって強く抱き締め返した


「私が死ぬまで一緒にいてね…」


「……………はい…約束します…」


そう言って男が微笑んだのを合図に二人は誓い合うように唇を重ねた






(さ、今日はもう寝たほうがいいですヨ)
(嫌だ)
(エー)
(一緒にいてくれるんでしょ?)
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