短編中編

□桜の下で、
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ハヅキside


あの頃に戻った様だった
何をするわけでもなく、ただ窓から外を眺める…ただ、一つだけ違うのは

『愛した人が居るのに…会えない…』

私の地位は城の姫
でも、今はいらない。こんな城も権力も全部

彼に、会いたい…

『…抜け出そう…城も、身分も捨てて…』

そうだ、彼と初めて会った時も城から抜け出した時だった

『また…会えるよね、リボーン…』

あの桜の木の下で…





リボーンside


もうじき、日本での仕事が片付く

「明日くらいまでか…どこに居るんだ…」

大通りに出ると、忙しなく走り回る男達がいた

「見つかったか!?」
「いや、民家の方には居なかった…」
「どこに居られるんだ、姫は」

男は部下に指示を出した

「手当たり次第捜索しろ」


城を飛び出した姫の追跡か

「よほど暇なのか…(それとも別の理由か…)」

一瞬、城から抜け出したのはハヅキなのかと思ったが、そんな筈は無いと否定した
ハヅキは極普通の、庶民的な女だからと


そう考えている頭とは裏腹に、脚は動いていた
ハヅキに初めて会ったあの場所へ





ハヅキside


自分を捜索する父親の部下を避け、見つかれば撒くを繰り返し

『…着いた……』

とても思い出深い、忘れる事も出来そうにない場所

『あの頃と変わらない…咲いててよかった…』

幸いにも、過去と変わらずその桜は凛と咲き誇っていた

春のやわらかな陽射しに包まれ、ゆっくりと瞼を閉じた





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