短編中編

□てんき
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雨は昔から好きな天気だった
雨が降った時の独特な匂いも理由の一つだけど、あの微妙な孤独感も割と好きだ

窓の外で降り始めた雨粒を眺めながら、ふと思った

「うわー、雨降ってきてんじゃん」
「ホントに?やっばー傘持ってきてないよ」

天候の変化に気付いたクラスメイトの殆どは、濡れるしジメジメするし等と愚痴をこぼし始めていた

グラウンド使う運動部には、哀れとしか言い様が無いな…
それにしても、ここって何でサッカー場だけ屋内なんだろ

去年丸一年気に留めなかった事を気にするほど、暇を持て余している

そのせいか、放課後を告げるチャイム位しか聞いた記憶がない

『…帰るのもダルいな…ん』

そこで初めて自分の机の隅に置かれた冊子とメモに気付いた

『日直日誌って…あぁ、今日日直だったっけ』

まぁ寮帰っても相部屋の奴らは騒がしいしウザいし、暇潰しにはなるか

そう思いながら、時間割やら何やらを頼って日誌のページを埋めることにした





『……………………………まぁこんだけ書いときゃ授業全く聞いてなかったとは思わないか』

「全く聞いてなかったのか」

『うん……………って、え?』

「余り驚かないんだな」

いや十分驚いてるから
無表情だからって無感動な訳じゃないし
そうか、私は鬼道にもそんな印象持たれてるのか

『あー…もしかして部活終了時間まで書いてたのか私は』

「いや、俺が担任に呼ばれただけだ」

『…あんた程真面目な奴でも呼び出しとかあるんだ』

「そうじゃなくて…」

そうとう私の理解力が酷いと思ったのか、ここに至るまでの経緯を説明しだした

『成る程。まぁ気付いて良かったな』

「華藤、お前感覚だけで生きてないか?」

『そーだね。……雨酷くなってるなー』

「これはもう止みそうに無いな」

止まなくて良いけどね

「お前、傘とか持ってるのか?」

『んー持っては無いけど私寮生活だからいらないし
…何で聞くの。あんたは持ってないとか』

「置き傘がある」

…こーゆーとこ何気にきっちりしてるよね鬼道て

『あ、部活終わったらで良いから付き合ってくんない?』

「煤cどこにだ」

『駅前。前から行こうと思ってたんだけどダルくてさー』

「さっき傘持ってないと言ったのは誰だ」

『鬼道のに入れてくれればいいよ。今更取り行くの面倒だし』

「…素で言ってるのか?」

『あれ、相合い傘とか気にするタイプなのあんた
へぇ、意外』

「何でも無いような言い方するな」

若干頬に赤みが差しているように見える
外がもう薄暗くなってきているため、目を懲らさないとよく分からないけど

「晴れた日に行く選択肢は無いのか」

『明日んなったら多分気が反れてるよ
というか別にどこでもいいんだよね。何となく歩きたい感じ
でも1人だとダルいからさー』

「…そう言うのは友人に言え」

『あんただから言ってんの
分かんない?』

表面上はこんな事思ってるとは絶対気付かれないけど
もう良いよね

「…華藤?」

『こんくらい感覚で察してよ
要するに、…あんたが好きってコト』

「………っ」

告白何かには慣れてると思ったけど違ったらしい
その証拠に耳まで赤みを帯び始めた

「…今まで、そんな素振り全く見せなかったのにか?」

『そりゃあ寮の相部屋が恋バナに過剰反応するのが居るから、ヘタにボロ出したくなかっただけ』

バレたら気が済むまで質問責めに合うに決まってる

『で、あんたはどうなの』

「………俺も…好きだ、華藤」

『!』

意外だった
てっきり、今は部活のこと以外考えなく無いとかいってかわされると思ってた

「…何か言え」

『自分で言ったのに紅くなってどーすんの』

「うるさい」

赤面したままで怒られても余り怖くない
普段の鬼道からは想像できないその表示に、思わず笑みがこぼれていた

『もうさ、今からどっか寄って行かない?』

「そうだな…」

しとしとと雨が降る夕暮れ時
一つの幸せが生まれた


雨は昔から好きだった
今は、もっと好きになれた
雨が私に幸せをくれるから





end
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