BL
□存在意義
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俺は幼い頃に両親を亡くした。そして身寄りなんざ、隠居しかけのクソババア一人。周りの大人たちは俺を哀れむような目で宥める。そんな腐った国に唯一頼れる存在が居た。
「おい、三代目」
「なんだ?サソリ」
親の居ない俺に忍の極意を教えてくれたのは今、目の前で風影の書類仕事を片付けている三代目。こいつはある意味俺の父親変わりみたいなものだった。
「今日は…何の日か、分かるか?」
「今日?何の日だ?」
「…………。やっぱいい」
「?」
そうだ、父親変わりと言っても"実の"ではない。俺の誕生日を忘れるのも納得がいく。でも、それでも覚えてて欲しかった。
誕生日を誰にも祝ってもらった事がない俺は、三代目に期待をしていた。あいつだけは覚えててくれているだろうと…。
その期待はあっさりと裏切られた。俺は今も書類整理している三代目の背中を見て自嘲気味に笑った。
俺が産まれてきた理由なんて分からない。だってそうだろう?誰からも望まれて産まれてきた訳でもない。
どちらかと言うと俺は危険人物として扱われていた。傀儡を操らせれば、10人かかって来ようと20人かかって来ようと皆殺しだ。それに人間を傀儡にする事も出来る。
その異名から『天才造型師赤砂のサソリ』と呼ばれるようになった。それは尊敬の意からではない。脅威の意からだった。
だから俺の存在意義なんて無いに等しい。親からの愛を十分に受ける事もなく成長し、他人の愛欲しさに色んな女を抱いた。
それでも愛情なんてくれる奴はいなかった。俺に抱かれる女なんてほとんどが俺の地位狙いだったからな。
一時期、死のうかと思った時だってあった。存在意義がないなら居なくたって、そんなに変わらない。何千万人居る1人でしか過ぎないのだから。
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