はじめての恋は、王子様と。
□はじめての恋は、王子様と。
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灰かぶりの様に灰を被るようなことは無いものの、あきらかにサラと姉たちの待遇は違った。
義母はサラに姉のお古を着せたり、食事を減らしたりして、極力お金をかけないようにしていたけれど、
それだけでは飽き足らず、家の仕事までさせて使用人を雇うお金を浮かせている。
今いるマーサは父が昔から懇意にしているから雇っているだけで、もしそうでなければ解雇されていただろう。
そこまでされると、怒るのも通り越して、感心してしまう。
訴えようにも、それが父の負担になることは目に見えている。
命にかかわるほどのものでもないし、ちょっとしたいいこと――
以前は許されなかったような、街へのお使いや台所でのつまみ食いなど――もある。
それにサラは仕事に燃える父を見るのが好きだった。
だから、自分の僅かな不遇くらい飲み込んでみようかなと思うのだ。
でも、サラは今日の舞踏会にはどうしても行きたかった。
いつも頑張っているのだから、このくらいは望んでも罰が当たらないはず。
だから、異国にいる父に、前から手紙で頼み込んで、ドレスが無いなどと理由をつけて渋る母を説得してもらっていた。
「だって――あたしは〈恋〉がしたいんだもの」
サラは朝焼けの空に向かって呟く。
別に〈灰かぶり〉のように、相手が本物の王子様じゃなくてもいい。
自分だけの素敵な〈王子様〉に巡り逢いたかったのだ。