はじめての恋は、王子様と。

□はじめての恋は、王子様と。
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「――そうして、硝子の靴をその小さな足にぴったり収めた〈灰かぶり〉は、
王子様のお妃になり、幸せに暮らしました――」

 幼い頃から何度も読みふけったおとぎ話の本を閉じると、サラは目を閉じて大きく息を吸った。

 初夏の朝、朝靄を纏った空気が開いた窓から流れ込み、頬を撫でていく。

 瞼ごしにささやかな白い光を感じたサラは、その小麦色の長い睫毛を一気に持ち上げる。

窓の外では登りかけた太陽が山際を赤く染めていた。

「いよいよね」

 昨夜は興奮して寝付けなかった。

寝不足のはずだけれど、眼も頭もベッドの中に居てももう眠れそうにないくらいに冴えている。

 サラは、ゆっくりとベットから抜け出すと、ひとつ大きく伸びをした。

そして壁にかけた青いドレスを眺める。

サラの瞳の色と同じ深い青のそのドレスを。

「今日はきっと特別な一日になるわ。――してみせる!」

 朝日がキラキラと窓に反射し、サラの瞳も宝石のように輝いた。

 胸をくすぐる予感がサラの心を踊らせていた。
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