市丸帝国

□初めての冬:2
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 「これからも宜しく頼むね。既に知ってる人や、見掛けた人も多いと思うけど、新年を区切りに、皆に紹介しておこうと思う」

 一番お気に入りの兎の着ぐるみ(ピンク色)で、チビ丸が入ってくる。
 「三番隊の守護神みたいな存在だと思って欲しい。見掛けたらキチンと挨拶するように」

 兎の着ぐるみが?ピンク兎が隊の守護神!?等と思うのはギンを知らない若い隊士達だ。『市丸体制』を覚えている者は、動じない。むしろ「吉良さんにも、遊び心や余裕が出てきたんだな」くらいにしか思わない。
 新年仕事初めの日に、きちんと三番隊士全員に知らせておきたいからと吉良に言われたチビ丸は、半日かけて悩んだ結果、回収率No.1のピンク色の兎の着ぐるみをチョイスした。それは大当たりだったようだ。既に古株の隊士達に囲まれて、お菓子や食べ物を色々貰っている。
 (さすが市丸隊長、と市丸隊長を覚えている面子だな)

 感心する。隊風は変わりきってはいなかった。この隊風を維持出来たことが、吉良には何よりも嬉しかった。

 両手に余るお菓子をゲットしたチビ丸は、吉良を伴って他所の隊にも顔見せに行き、軽く一週間分を収穫した。

 『三番隊は新しいマスコットを飼ったらしい』
 『百年経っても市丸色はなくなっていない』
 
 いろいろな噂が立ったが行き着く所はやはり、あの『市丸ギン』の副隊長を務めた男だからか…となるのだ。悪い意味で使われているにも関わらず、吉良は上機嫌だった。誰が何と言おうと、吉良にとってはかけがえのない上官。ありし日々の日常の『三番隊隊長、市丸ギン』を知って言っているわけではない。自分と、かつてを知る隊士達が知っていればいいことなのだから。



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