少し長めな読物
□二日酔いの…
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頭が割れるように痛い…?喉がカラカラするのは確かだ。…何より気持ち悪い…のか?違う、二日酔いの具合の悪さはない。ただ、やたらと身体がダルいし、やたら重い。うなされていた原因と思われる、胸元に置かれているモノを退けて、うっすらと眼を開けて周りを見渡してみた。
(此処…ボクの部屋、やんな?)
横に、気持ち良さ気に眠る副官がいなければ、何時もと変わらない、剣八と飲みに出掛けた翌日に有りがちな、二日酔いの朝だ。霞の向こうにあるはずの記憶を辿ってみる。
夕方、剣やんが誘いに来た→何時もの居酒屋に出掛けた→しこたま飲んだ→帰り際、剣やんに何かを言われて何かを渡された…ような?
記憶が曖昧になってきて、下手に自力で現状に至った経緯を導き出そうとすれば、隣のゴールか、目的地と違う山の天辺に辿り着きそうだ。どうにも埒があかないので、眠っている副官を叩き起こした。
「イヅル、お早うさん」
「あ、お早うございます♪市丸隊長」
ギュウっと抱き付いてくるのを剥がす。
「なして、居んの?」
「真夜中にお帰りだったのですが、気付いて見ていましたら、廊下を真っ直ぐに歩けないご様子だったので。あのまま放っておいたら、何処へ行かれるか分かりませんでしたので、お部屋へお連れさせて頂きました次第です」
なるほど。千鳥足だったから連れてきてくれたという訳か。
「ボク、何か持ってへんかった?」
「『いつも世話になっているから』と仰って、持ってらした折り詰めを戴きましたが?」
絶対イヅルに迷惑かけるて、剣やん知っとって持たせたんやな?で、ボクは剣やんに言われたまんま、律儀にそない言うてイヅルに渡した、と。
イヅルの指差した先の机の上に、昨夜も確かに見た、覚えのあり過ぎる店名の入った折り詰めがあった。
「吐き気とか、ないんやけど?」
「寝付かれる前に、二日酔いを止めるお薬を飲んで頂きました」
はァ、いっつも迷惑かけとるしな。執務室で青い顔して、桶抱えこんで、筆も持たれへんことなん多すぎて、馴れてしもたっちゅうワケか…。