短い読物

□徒然話
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「ずっと思ってたんだけどね…」
「何ですか?」

 三番隊執務室。

「あたしの斬魄刀って、灰が舞うじゃない?」
「そう、でしたね」

 気紛れで、我が儘で…と続ける。

「煙にまく、というか、つかみ所のない所なんか、松本さんに似てるんじゃないですか?」
「うん、多分ね」

 灰猫は確かにそういう斬魄刀だ。自分の分身なのだから、多分、自分もそうなのだろう。

「僕の侘助は、重くするだけですから」
「だけって…あんたとあたしの斬魄刀の相性が悪いだけじゃない?」

 侘助は、灰猫や千本桜のように、刀身の形状が分散するタイプの斬魄刀とは、相性が悪い。

「まぁ、相性と言ってしまえば、その通りなんですけど…」
「じゃ、ギンは?って言うか、神鎗と?」



「随分とえげつないチカラやね?」
「えげつないって…」

 それからしばらく、何となく侘助と気まずくなったっけ…

「ちゃあんと話し掛けて、手入れしたらんとアカンやろ?侘助はん、泣いてはるよ?」
「お分かりになるんですか?」
「…なんとなく?」


「松本さん、市丸隊長、僕達の斬魄刀の能力を知ってたと思いますか?」

 顎に手を当てて、少し考えてから答えた。

「多分、ね」
「そうなら、すごく意地悪ですね」
「だってギンだもの」
「言えてますね」

 少しだけ笑えるようになった。乱菊も、イヅルも。ギンのことを話す時だけ、懐かしく笑える。

 時々、フラッと三番隊に顔を出す乱菊と、引きこもりがちなイヅルは、少しずつお互いの知っている『市丸ギン』について話をするようになっていた。


「接近戦向きなんや…ほんなら、体の捌き方やら、相手の攻撃をかわす方法、考えなアカンよ?」
 一々手をとり、足をとるような指導はしてくれなかった。撃ち込みの相手はしてくれたが…。

「へぇ、隊長らしいことしてたんだ、ギン?身内は可愛いってことかしら?」
「松本さんだって身内…というより、家族じゃないですか」
「あいつがそう思っててくれてたなら、ね」



「乱菊〜?遠くまで行ったら危ないで?」
「キノコ捕りだけだから大丈夫!」
「日ィ暮れるまでには戻らなアカンよ?」
 でも夕方前には必ず迎えに来てくれた。

「…意外に過保護、だったかな?」
「市丸隊長が?」
「子供だったし、ね」
 まだまだ幼くて、肩を寄せ合いながら生きていた頃の話。この世界では珍しくない。
「今ほどあからさまな作り笑顔じゃなかったし」
「本当に、お面みたいに変わらない表情でしたね…読み取れるようになるまで、かなり時間がかかりました」
「でも、出来るようになったじゃない?」
「…副官ですから」
「それだけじゃないくせにィ」
「お気付き…だったんですか?」



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