短い読物
□居酒屋談義
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居酒屋で真剣に話し込んでいる真顔の男達。副隊長が二人。他の死神達は遠慮がちに席を立ち、遠ざかっている。
「で、それを俺に言ってどうしたいんだ…」
「どう、って別にどうにかして欲しいって訳じゃないですけど…」
悲しいなぁ、俺。それにお人好し過ぎるよなぁ。こないだ、ここで乱菊さんにフラれたばっかりだってのに、後輩の相談にのってやってるなんて…。チクショー!酒が目に滲みるぜ…。
「とにかくだな、んなこたぁ言うだけ言って、当たってみなきゃ分からんだろうが」
「当たって砕けた、いえ、すみません。砕けろ、は檜佐木さんだけで充分でしょう?」
「…人が親身になって相談にのってやってりゃ調子に乗りやがって…って、おいコラ、なんで砕けたって知ってんだ、吉良?」
「松本さんから聞きましたから」
と言って誤魔化せば良い、とは上司からの入れ知恵だ。夜の居酒屋の前を歩いていたら、項垂れた檜佐木が店から出てきたのを見掛けた途端、後を乱菊が出てきたのだと聞いた。
「乱菊さん…高嶺の花だよなぁ…」
「松本さんが?とても話しやすい、気さくな方じゃないですか?」
「違う。そういう意味じゃねぇ」
「知ってます」
しれっと答えた吉良に、かなりムカッとした。
「まだ雛森なら勝機はあるだろうが!」
「雛森くん?」
間の抜けな声で答えられて、逆に檜佐木の方が拍子抜けしてしまった。
「さっきの話、雛森のこと、だろ?」
「…いえ…ある意味、高嶺の花、いや…花よりも高い…のかな…?」
こんな顔の吉良、見たことねぇぞ?雛森じゃねぇのか?オイオイ、マジかよ…しかも本気で?
「檜佐木さん」
ニッコリ笑顔。
「詮索無用でお願いしますね」
最近、こんな顔、どっかで見たような…?
乱菊さんだ!乱菊さんが、やっぱりこんな表情で『誰か』のこと、話してたんだ!あの時も、誰かは聞くなって、やっぱり今の吉良みたいな表情で…