短い読物

□ココロノヤミ
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 ふと『笑うこと』が意外に難しいことに気付く。癖になっていて、いつの間にか夜空を見上げて、星を見ていた。星を読んで居場所を知り、月の満ち欠けで日にちを知るのが、生きていく為に必要だった。馴れたつもりでいたのに、たった一人がいないことが淋しさを倍増させる。顔馴染みと沢山話をして、盛り上がってはしゃいで楽しそうなフリをしている自分を客観的に見ている自分がいる。


 いつまで待てば、彼は自分のところに帰ってくるのだろう?いつ?いつまで?『いつか』を信じていれば、彼は帰ってくる?もう一人は嫌だと、心が悲鳴をあげている。誰か違うひとに優しくされれば、少しは癒されるのか…。魂の奥底から《否》の一文字しか浮かんでこない。彼しか要らない。何故、昨日も、今日も、明日も、彼が側にいない?何処で何が狂った?


 長い長い年月の中で、楽しいことも沢山あった。彼無しでも過ごしていく術も身に付けた。でも、目は、彼の姿を追い、耳は声を拾い、魂は、何時でも彼の欠片を探し、パズルのピースのように組み立てて『いつか』もう一度逢える彼を作っていく。


 特別な日を作ってくれた彼は、もう知らない人のように振る舞い、容易に近付くことを許してくれない。自分はまだ、こんなに彼を必要としているのに。


 見上げた夜空は、まるで心模様のよう。黒ではなく、吸い込まれそうな深い深いコバルトブルー。瞬く星達に願いを。


『いつか』彼を『返して』




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