市丸帝国
□初めての冬:番外編
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「こ〜んな晴れやかな気分で新年を迎えるなんて、どれだけ振りかしら〜?」
大晦日の晩、大きな酒樽を担いで三番隊隊首室を訪れた乱菊は、まさに感無量といった風情、早いペースでぐい飲みを空にしていた。すぐ横にはチビ丸が、やはりほろ酔い気分で飲んだくれている。
「あの…新年を迎える前におせちなくなっちゃいますから、程々に…」
「固いコト言わんといてェな、雰囲気台無しやん…無くなったらまた作ったらえェんやから♪」
今年のおせちは、吉良が隊長として迎えた初めての年末業務で、忙しく隊長職務に追われている間に、暇なチビ丸が、炬燵でヌクヌクしながら下拵えしてから、踏み台を並べた床の上げ底状態で台所に立って、作ったものだ。
作った張本人に言われてしまっては、何にも言えなくなってしまう。が、チビ丸お手製のおせちを食べたいのは、吉良も同じ。しかも、新たに作るとしたら、それは吉良の仕事になる。
自分で作って、それを食べるのは、流石に虚しい。待ちに待った人がいるから、その人がわざわざ作ってくれたおせちを食べ逃したから…というのは、悲し過ぎる。
「何よぉ?ギンの作ったおせち食べたいなら、こっち来て、一緒に飲めばいいじゃなぁい?」
「イヅルも一緒に飲も♪」