市丸帝国
□序章/はじまりの秋:3(終)
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目的の『お月さま』は、雑木林を抜けるかどうかという場所で、倒れて眠りこけていた。
長かったな…
感想はそれくらいしか湧いてこない。見付かるまで百年近く、見付かってから一ヶ月以上…か。
長かったな…
それも、いいように翻弄されっ放しの一ヶ月だったな…。
長かったな…
ほんとうに…
「取り敢えず、このまま霊圧を封じて、こっそり三番隊の僕の部屋まで運びましょうか」
「…そうね」
三番隊敷地の裏手から、隊首室に忍び込む。今は吉良の部屋だというのに、これではまるで泥棒だ。
「ど!…泥棒!?」
「いや、疑問形で言われても…」
「吉良副…た、隊長!」
「あんた一体どういう指導してきたのよ…」
「いえ、市丸隊長がみえた頃の雰囲気のままでいたかっただけで…」
「ふぅん…」
「ちょっ、松本さん!その冷たい視線、止めて下さいよ!?」
乱菊は、ニヤリと笑って吉良を一瞥する。
「同族♪」
「なっ…」
「こんな小さな子供、拐ってきちゃいけないんですよ、隊長?」
「拐ってって…君、人聞き悪いことを、言わないでくれないかな?今の三番隊の最優先事項は?」
「『銀髪の少年の』って…あっ!」
「分かってくれたかい?」
「吉良隊長が戻られたら、すぐ呼んでくれって、先輩方から言われてたんだっ!!」
「彼等か…」
「誰よ?」
「隊長がいらしたころからの席官ですよ…喧しくなりますよ、松本さ…」
「市丸隊長!!」「隊長!お待ちしとりました!!」「市丸隊長、いずこー!?」
ドカドカと入り込んでくる、むさ苦しい集団。
「……!!」
目を覚ました…と思った時には、逃げていた。
「嬉しいのは分かるけどね?…せめて静かに入ってきて欲しかったな…」
「「「申し訳ありまッせんッ!!」」」