短編小説【2】

□ひらり、また一枚
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桜の蕾が開いた4月。


人間界は、春を迎えていた。


さわさわと揺れる春風に、ざわざわと揺れる桜の木々。


ひらりひらりと桜の花びらが、ゆっくりと散った。


「師範が亡くなってからもう三回目の春……か。」


鈴木は、誰もいない屋敷を見て呟いた。







 久しぶりに人間界にやってきた鈴木は、幻海の墓参りをしようと以前世話になった場所を訪れていた。


ここは、何も変わっていない。

山々に囲まれた修業場に、でんと立つ幻海の屋敷。


ただ変わったとすれば、賑やかだったのが静かになってしまったということだけ。


鈴木は、しばらくその場に立ってここであった事を思いだしていたのだった。


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