短編小説【2】
□雨しとしと
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彼の察した通りだった。
びっしょりと濡れた黒い物体が、窓の近くで小さく舌打ちをした。
髪の毛から滴り落ちる雨にうざったそうに、顔をしかめた飛影はバサッと水気を吸ったマントを放り投げた。
びちゃっと落ちたマントからは、少しずつ雨水が広がる。
床は、びしょびしょになっていた。
「…飛影。こんな雨の中、一体何用で来たんです…?後から誰が片づけると思ってるんですか!」
「フフン。ざまあみ…「あっそういえば、桑原くんに用事があったんですよね、俺。」
「………。」
蔵馬は、言葉を詰まらせた飛影から視線を外すとタオルを取りにいこうと部屋を出ようとした時だった。
「腹へった…。」
小さくつぶやいた飛影の声が聞こえた。
そんな理由でここに…と苦笑した蔵馬は、ちょっと待ってて下さい…と表情をしかめたままの飛影に声をかけると部屋を後にしたのだった。
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