haganeno.

□夢で会えたら
1ページ/2ページ



隣の金色を見下ろす。
昨日は随分遅くまで起きていたようで、先程から欠伸を連発している。眠気と戦うのに夢中で、じいっと見つめられていることに気がついていない。

「―なんだ?」

学校が見えてきた辺りで、彼は漸く観察されていることに気がついた様だ。

「別に。」
「あっそ。」

興味なさそうに顔を前に向ける。
全く……相変わらず素っ気ない。
なんとなくつまらなかったので、彼の気を引くために昨日の夢の話でもすることにした。

「あぁ、1つだけ君にいいたいことがあったな。」
「ん?今度はなんだ?」

そういって此方に向けられる彼の瞳。深い金色に満足して話を続ける。

「……君、私のことが好きだろう?」
「はぁ!!?」

零れんばかりに見開かれた大きな瞳、目元には朱が射した。鯉よろしく口をぱくぱくさせている様はなんとも間抜けっぽい。


「古典の世界では夢にある人が出てきた場合、その人は自分の事が好きだということらしい。」


昨日の古典の授業で仕入れた知識だ。まぁ、このちっこい秀才君が授業をきちんと聞いていたか甚だ疑問ではあるが、彼がこの事を知っていようがいまいがそんな事正直関係ない。


「私の今朝方の夢に君がでてきた。つまり君は私のことが好きだ、ということだろう?いや……結構な頻度で出てくるから、君は随分私に惚れているようだな。」


「さぁて放課後の予定は開けておくか。」


そこまで一方的に言い切ってにやりと笑ってみると、目の前の金つぶはもっと赤くなってぷるぷるし始めた。


「ばか……馬鹿ロイ!!」


そういって攻撃を仕掛けてきた彼は小柄な癖にすこぶる強い。
ここは遠慮なく、逃げさせていただこう。


桜を散らす4月の風を切って全力疾走。
私が門を駆け抜けた時、丁度始業のチャイムが鳴った。



.

次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ