haganeno.

□渡り鳥
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「おい無能大佐ちゃんと仕事してるか?」
「…鋼の。君はもっとまともに入ってくることはできないのかね?しかも久々の再会でいきなり暴言とはご挨拶なことだ。」

いつものごとく騒々しく部屋へ入ってくる少年に効き目の全くない注意をする。

「これはこれはマスタング大佐殿。ご機嫌のほどはいかがです?」

その注意を聞いた途端なんとも仰々しくリアクションをとる。

「……ハァ…全く………で?今回もスカだったのかね。」
「そ。伝説の紅い“水”が有るって聞いたから行ってみたんだけど…」

「賢者の“石”と言われていても形状は様々だからな。水があってもおかしくはあるまい?」
「…それが本当にただの紅い“水”だったんだよ。まんま紅い水。いや…水と言うよりかはお湯かな?温泉だったんだ。成分のせいで赤っぽい。」
「温泉か………」


「あぁー!!体の傷も治るっつーから期待してわざわざ山奥までいったのに!!!そりゃ温泉じゃ治るよなぁ〜。滋養効果半端ないし?」



笑ってはいるけれど


その、目のしたの隈。


その、打ち付けた拳の中の



本当の想い。





「エド……………」



「……あ…?」





たまには立ち止まってもいい―


―そんなこと、この自分に言う資格などない。



だから、


せめて――




「いつでも……戻ってきていいんだからな…」



こんな我儘な言葉くらいは
許して欲しい。



ぎゅっと細い腰を抱き締めた。





窓硝子の向こうを
一羽のはぐれた渡り鳥が
飛んでいた。



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