haganeno.
□蜂蜜。
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「……好きなんだ」
なぁ…………鋼の?
―――――
「はあ?おい……そんなのはそこらのねぇちゃんにでも言ってやれよ。ったく一体全体どうしたっていうんだよ」
「あぁ。あまり大丈夫ではないーーのは私自身がよく理解しているはずだ」
でも、それでも君が好きなんだ。
その一行は辛うじて握り潰す。
いつから?そんな感覚など、とうの昔に無くしてしまった。
最初はこんな想い切り捨ててしまおうと決意した。でも臆病な私にそんなことできなかった。
せめてこの胸にしまってしまおう。そんな決意ですら今このようにして崩れさった。
「たいさ……?」
ーーほら、この想いは聡い君の邪魔にしかならないのだ。
それでも、
「なあ、鋼の………」
苦しいんだ……
私は君の邪魔などしたくない。私は君の手助けができればそれで充分だ。別に返事なんぞ聞きたくはない。
今のまま。今のまま。
君がここにきて、旅の話をして、厭味の1つくらいとばして。笑って。
それだけでいい。
「ははっ。急に悪かった。今日は帰っていい。何だか最近徹夜続きだったのが祟ったらしいな」
ドアの開く音がしないのを訝しんで顔を上げてみれば、目の前に鋼のの顔があった。
「……か?」
「は?」
「本気か?」
その顔があまりに真剣だったので、はぐらかすこともできなかった。
首を縦に振る。
「あんた、ばっかじゃないの?」
もう、軽蔑してくれたっていい。だから、もう…………
「オレの気持ちも考えないで。」
もう、お仕舞いだ。
「またオレのことからかってんのかなって思ったんだけど…………本気なんだろ?」
「ああ。」
遊びじゃあない、本気の、恋。
だから、痛い。
「いっつもあんたはそうなんだ。なんでも自分のなかに閉じ込めて……お願いだから…オレの気持ちもきいてよ……。」
「はがね……の?」
「オレだって……!」
オレだってあんたのことがずっとすきなんだ!!!
―えっ
顔を上げたときにはもう既に少年は扉の向こうに消えていた。
残されたのはぼぅっと立ちすくむ黒い男性と、心に灯った温もり。
その温かさはまるで金色の蜂蜜で溶かされたように甘やかで――
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