kyogoku .

□雨ふり。
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外を眺めていたら、ぽつりと雫が落ちてきた。


「あぁ、雨だ………」
「とうとう降ってきたか……」

僕の呟きが聞こえたのか、京極堂が顔を顰めた。
余程大切な本が湿気るのが厭なのだろう。



雨。



「………榎さん」

黙りこくってしまった僕を訝しんで、珍しく京極堂の方から声をかけてきた。

「ん?なんでもないゾ?」



ただ、あのときもあめだっただけだ。



京極堂に背を向けてゴロンと横になる。



あのときの音が視えてきそうで。


そっと目を閉じた。





ぜんぶぜんぶ。
流されて
しまえばいいのに。











ピカッ

急に目の前が明るくなる。

『―榎木津隊長ッ!!!!!!』


避けることが、できなかった。



『隊長ッ……隊長ーー』




衝撃で倒れていく体。

それは
まるで

崩れゆく……ビクトールの様で。




最期に観たものは真っ白で真っ黒なソラと――









「………ぁ…きひこ……」



「なんだい、榎さん?」



あのときも、こんな風にザァアザァア降りだったんだよ。



その呟きは雨音に流されてしまった。





《でもあなたのかおが観えたとき、何故だか少し安心できた...》





―――――

榎さんって、位何ですか?
本には将校としか書いてない。
まぁ、将校だから隊長でいいか。みたいなかんじです。
そこはあえてスルーで。


.

 

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