中編

□肆
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暖かく降り注ぐ太陽の光が差し込む室内。障子を開けていることで直射日光が当たる場所に、綺麗に畳んだ状態の制服を置いてそっと触れる。よく分からないまま戦国時代に来て以来、ずっと箪笥にしまっておいた制服。久し振りに出したのは、ここに来る前を思い出す為。


『…ふぅ』


一人きりの室内で溜め息をつく。今、よく関わる三成と吉継はいない。戦に行っちゃった。それも私に好きだと言った次の日から。私が考える時間を作る為にわざとそうしたのかは分からないけど、黙って行くのは酷いと思う。…見送りくらいしたかった。まぁまともに顔合わせられる気がしないけど。

…三成に告白されてから、私の頭の中は完全に三成に占拠された。告白のことと戦のことがぐるぐるしてご飯もあまり食べられないせいでよく世話してくれる女中さんに病気かと心配された。
三成が言った好き、は恋愛対象として好き、ってことだ。そして欲しいものは…私。でも私が未来から来た人ってことを知ってる。三成は私のことを気遣って、元いた世界のことも考えろって言ったんだ。優しい人だから。


『三成…』


何回も何回も考えた結果、本音を言えば…三成と一緒に居たい。きゅんとしたんだ、三成に手を握られた時、切なげな顔をした時、抱き留められた時、告白された時。ドキドキして、かっこよくて。三成といるのが当たり前になってたんだ、抱き着いたり怒られたり、ただ話したり。三成がいない日々は、あまりにも寂しくてつまらない。
こっちに来た理由は未だに分からないし、今向こうがどうなってるかは気になるし心配。でもそれ以上に、戦でいない三成の方が心配な私がいる。強いって知っているのに。

私は、三成が好きなんだ。私も気付かないうちに、好きになってたんだ。多分三成がいないと私は駄目な気がする。…だから、決めた。

…三成が帰ってきたら、ちゃんと言うんだ。私も好きって。三成と同じ意味で。ずっと側にいるって。


『早く帰ってこないかなぁ』

「亜輝?」

『わあぁっ!?』


決意も固めて意気込んだ時に外からぬっと人が現れて思わず大声を上げた。ていうか制服出しっ放し!!と慌てて後ろに引っ込める。


「うおっ!?悪い、驚かせてしまったな。障子が開いていたからつい…」

『い、家康かぁ…急に顔出さないでよ』


開いた障子の側に立っていたのは家康だった。家康は少し前に別の戦に出ていて、三成と入れ替わりで帰ってきていた。

入って良いか?と訊いてきたから良いよ、と返して、家康は部屋に入り私の向かい側に腰を降ろした。



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