中編
□弐
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『みっつなりー』
「っ!?」
毎日行なっている鍛練を終え、縁側に腰掛けた三成に後ろから抱き着く。三成はビクッとしたけど流石武士、私がダイブしてもちょっとしか傾かない。
私がいきなり戦国時代(?)にやって来てから暫く経った。最初は着付けの仕方も分らなくて何をするにもそこら辺にいた人(吉継と女中さんが多い)を呼んでいたけど、最近やっと慣れてきた。慣れればここは快適だ。家事は全部女中さんがやってくれるし、勉強しなくて良いし。
「亜輝、いきなり抱き着くな!」
『えー駄目?三成細いくせに割とがっしりしてるから後ろから抱き着くの好きなんだけどなー』
「なっ…貴様には女としての自覚や恥じらいは無いのか…」
『自覚も恥じらいもあるよ?』
「どこがだ!」
なんだか顔を背けてぶつぶつ言っている三成に、私の頭に疑問符が浮かびそうだ。別に私何もしてないけどな。
暫く見てきて三成のこと分かってきたつもりだけどまだ足りないみたいだ。因みに私が分かったことは前髪に目がいきがちだけど目茶苦茶イケメンなこと。少食なくせにものすごい運動量ってこと。上司?の秀吉さん馬鹿なこと。コミュニケーションに関して不器用さんだけど嘘はつかないこと。なんか家康とそりが合わないらしいこと。
あとこれは吉継とか他の人にも言えるけどめっちゃ強い。人間の域超えてるって。刀振ってるの見えないし輿で浮いてるし岩素手で砕くし。秀吉さんや半兵衛さんも多分そうなんだろうなぁ。
「聞いているのか!」
『え?ごめん聞いてなかった』
「……もう良い。とにかく離れろ」
『はぁい…』
仕方なく離れると三成が小さく息を吐いた。んでまた何か呟いてるなぁ…このやり取りもう何回も繰り返したなぁ。別に怒らせたい訳じゃないんだけど。
「やれ、騒がしいと思えばまた亜輝が三成にちょっかいを出しておったか」
『あ、吉継ー』
ふわふわと輿に乗ってやってきた吉継は私達を見て相変わらずの怪しい笑い方をした。
「刑部、何か用か」
「太閤が亜輝に城下を見せてやってはと思っているらしくてな、案内役をぬしに頼みたいそうだ」
「なに…?」
吉継の言葉を聞いた三成の眉毛が吊り上がる。うわぁ、不機嫌そう。
「秀吉様の命ならば従うが…何故私なのだ」
「常日頃亜輝といるのがぬしだからであろ。我は見てのとおりで案内は出来ぬからなぁ、頼んだぞ、三成」
「おい刑部!」
吉継はヒヒッと笑って用件だけ伝えるとまたふわふわ浮いてどこかへ行ってしまった。城下って城下町のことだよね?楽しみー!
「…まぁ良い。さっさと行くぞ」
『はーいっ!』
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