中編

□U
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夢を見た。逃げ出した私を怖い顔をした両親が追いかけてきて、無理矢理私を連れ戻すの。見合い相手には散々馬鹿にされて、お前みたいな女に価値は無い、誰も必要としない。そう言われる。
籠の中に入れられただ外を見るしかない私。この世界はどんな姿なの、そんなことも知らずに生きていくの。

こんなつまらない世界、いたくない。誰か籠から出して!

カチャリ。鍵が外れる音がした。続いて手が差し伸べられる。これは誰の手、あなたは誰?
俯きながらも掴んだ手は温かいのかよく分からない。でも心が満たされていくのが分かる。

あなたは―――


「ビオラ…ビオラ?」
『ん……?』

気がつくと薄暗い部屋と金髪を三つ編みにした可愛らしい少女の顔が目の前にあった。ああ、夢を見ていたんだった。ビオラは回転の遅い頭でそう考える。

『パンネロ…?』
「ふふ、もう朝よ。太陽が見えないから慣れてないと分からないかな?今ヴァンが朝ご飯作ってるから、着替えたら来てね」

性格をよく表している優しい笑みを浮かべ、パンネロは部屋を出ていった。
ここは地下街ダウンタウン。朝日など差して来る訳が無い。慣れない感覚に戸惑いながらもビオラは夜間着から着替えて髪を梳き、汲んである水で顔を洗ってからダイニングへと向かった。

ビオラが着く頃には既に全ての子供が起きており、料理の手伝いやら配膳やらを見事なチームワークでこなしていた。

「あ、ビオラお姉ちゃんおはよう。お寝坊さんね」
『お寝坊さん…』

自分よりかなり年下に見える少女がビオラに気付きそんなことを言う。生まれて初めてのお寝坊さん呼ばわりに若干ショックを受けた。

「お、おはようビオラ。もう少しで朝飯出来るからちょっと待ってて」
「ヴァン兄ービオラお姉ちゃんの席どうする?」
「パンネロの隣に適当に作って!」

台所ではヴァンが忙しそうに行ったり来たりしている。
やることが分からず手持ち無沙汰になってしまったビオラは仕方なく部屋の端へ移動し他の子供達の邪魔にならないようにした。



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