短い夢「文」

□自動喧嘩人形体験
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街に実体化した西欧の妖精、デュラハンと、その首なしの妖精に異常な程の好意を抱いている闇医者の少年の愛の巣。



そんなシュールな高級マンションの1室に、さらに「非凡」に属した人物が到着したことを、無機質なチャイムの音色が告げた。









「で?新羅。今度はうちの子に何をしてくれちゃって、おれがむかえに来なくちゃいけなくなったのかなぁ?」










折原臨也。



現在若干15歳にして池袋から新宿にかけてを縄張りとし、膨大な情報量を支配する『情報屋』を職業とする池袋最強候補。



一見普通の・・・平凡よりかなり整った端正な顔立ちを除いて言えば、そこらへんにいる優男風の少年と言えるのだが、



その身にまとう服のどこかしらに忍ばせてある2本の折りたたみナイフと同じくらいに、その瞳は鋭くそしてどこか妖しい。



そんな、周囲から敬遠されてばかりな彼が「うちの子」と称した少年が



異例の、臨也を「友」、または「心友」、「保護者」、そして「主人」として慕う、たった1人の男の子。









「うああああああん臨也あああああああっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!」










それこそが、先ほど闇医者・・・もとい岸谷新羅に散々暴言を吐いていた少年。



紅ソウマだった。



「何。今度は新羅に何されたの?」



「っく えっく・・・うぅっ〜っっ」



15歳の少年を保護者と呼ぶに値する程に幼い顔立ちの彼は現在7歳。



年齢的にもやはり小学校2,3年生という、まだ幼い少年が、真っ赤に顔を泣きはらして玄関で「マスター」をお出迎えしたのだ



新羅から臨也へ「ソウマをむかえに来てやってくれる?」と泣き声をBGMに電話がかかり、仕事を一時中断して来てみれば・・・。


     ・・
どうやら、また新羅がソウマに何かしたらしい。



当然の如く飛びついてくるソウマを受けてめてやろうと臨也がソウマに向けて両腕を開いた、いつもの流れの中に、











                ・・・・ 
「ちなみにね、臨也。今のソウマはあの静雄くん並の怪力だから、抱きつかれたら骨が砕けちゃうかもしれないよ?」










「え、それっ・・・て!!!」



反射的に避けてしまえるほどに、臨也は賢く。



しかしそれは臨也の理性の叫びを完璧に無視した物で。



『ばきっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』



妖精と人間の愛の巣、という、それだけ聞いたらどこのメルヘンなお城だと思われるだろうしかし普通の、少しばかり高級な、けれどやはり頑丈なトビラが



それこそ新羅の言葉通り、「木っ端微塵」になってしまって。



そして



「え、っと・・・ソウマ?ごめん。つい反射的に・・・っ。」



一応トビラの瓦礫・・・である金属片に埋もれたソウマが、泣きはらした顔を呆然とさせてそこに倒れ付していて。



見る間に大きな瞳から、ぽろぽろと涙が溢れ出した。







「臨也が、臨也がっっ。」







ああ。やってしまった。



「臨也なんかっ、だあああああい嫌あああああああああああああああああああああああああああああああああああいっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!」



「うあああああああああああああああああああああんっっ!!!」という心の底から哀しそうな泣き声を響かせながら、マスターに手放されたリードを引きずるが如く。






「ほんっともう。おれとセルティの愛の巣がまたドアなしになっちゃったじゃないか。君につけとけばいいのかな?臨也。」



「・・・・。とりあえずおれはソウマを追うから後で覚悟しといてくれるかな新羅っ。」



珍しく焦りを滲ませた臨也が駆け出した後、



ソウマの泣き声を聞いたセルティは何度目かのパンチを新羅の腹部に叩き込んだ。












大好きなマスターのもとを離れ





喧嘩人形の小さな男の子は





様々な出会いを巡り





そして心を知るのです。












「うあああああああん臨也あああああああああっっっっっ!!!!!!!!!!!!!」









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