短い夢「文」
□僕とシンデレラ
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シンデレラの継母たちが住んでいる小さな家の窓から、1人の少女が中を覗き込んでいる。
見つかれば変人扱いもいいところだが、飽きることなく食い入るように見つめる少女の顔は、笑みが絶えなかった。
「おっもしろいことになってるじゃない。」
少女の視線の先には、継母や姉たちがシンデレラをこきつかって・・・・。
いや・・・・これは。
「あ〜らお母さま!!まだお料理がおできにならないのかしら!!?そんなことだから2日間も何も食べられないんでなくて!?」
涙ながらに包丁を持って硬いカボチャと格闘する継母。
ただいま絶賛強制ダイエット中だ。1人の少女が発令した自分のことは自分でしろ法案は継母と姉。計3人が見事に苦しんでいる。
もちろん。その2日のあいだも少女は自分で作ったご馳走を見せ付けながら食している。
「あらやだお姉さまったら信じられないわ!そんな小さな穴まだふさげてないんですの!?速く直さないとボーイフレンドを誰かに奪われるかもしれませんよ♪」
嫌味を言うためだけに、その少女は家中を駆け回っていた。
その名はシンデレラ。そしてもとの名はソウマ・ベルマータ。
一人の少年だったソウマはこの世界に連れ去られ、シンデレラとして時を過ごしている。
「嫌だわお姉さまっ☆あんまり針でつつくからすっかりほつれちゃってるじゃないですか♪貸してくださいな。」
屈辱ながらシンデレラにドレスを渡すと嘘のように穴が塞がっていく。
「はいどうぞ☆」
「あ、ありがとうシンデレラ・・・。」
これでどうにかボーイフレンドとのデートに間に合う。と涙を浮かべる健気な姉に
「そう言えばお姉さま。ボーイフレンドのデヴィット様が先ほどお見えになって」
「!!?デヴィットが?」
喜びに顔を輝かせる少女は後に語りついだという。
「あの時、私は真の悪魔を見た。」と。
「僕たち、もう終わりにしよう。って言ってました☆」
「−〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっ!!!?」
崩れ落ちる少女に笑顔を向けつつも、ちょっと同情しながら、やりすぎたかな?と考えながら背を向け、
ーその続きは言わないほうがいいよね?
そのデヴィットは伝言を頼んだあげく、何故かと聞くソウマに向けて
「好きな人ができたんだ。」
「お姉さまよりも?」
「そう。」
とりあえず、心の中で「興味ねぇ〜〜〜☆」とか言いながら人懐っこそうに小首を傾げ
「どんな人なんですか?それをお聞きになったらお姉さまもきっと納得してくださると思うの♪」
「/////そ、そうだな・・・・。」
ーん?何でこの男顔面の血流量を上げたのかな。
簡単に言えば赤面する少年にそんな疑問を抱きながら、答えを待つと
「とてもキレイな人で・・・。」
「はい☆(そもそもあの人そこまできれいじゃないでしょ)」
「かわいくて・・・。」
「はい☆(どう違うのかな?)」
「それから・・・とても優しくて家庭的で・・・。」
「素敵な人なんですね♪(ステレオタイプな男だな。)」
機械のように返事をしていたソウマは急速にこの少年を『ウザイ奴』とみなした。
そして
「実は僕、告白もまだしてないんだ。」
「そうなんですか?(あっそ)」
「それで、今日告白しようと思ってる。」
「そうなんですか!!?がんばってくださいね☆(かわいそうだなその子)」
少年の想い人に心から同情しつつ、限りなく偽物のエールを送ったソウマの前に、
数輪の、情熱的な赤いバラが差し出された。
「君が好きなんだ!!シンデレラ!結婚してくれ!!!」
僕かーーーーーーーーーーーーーーーー((泣
お付き合いとかそう言うの全部すっ飛ばして結婚ときたか。なんていう向こう見ずな男。
しかも今まさに姉を目の前でふっておいてだ。
ーうん。ばかだこいつ。
「デヴィットさん・・・・。」
最高のスマイルは少年に楽園を見せ、
「お断りします。今すぐ視界から消えてください☆この変人♪」
一気に地獄へと突き落とした。
「冗談でしょうお姉さま♪これで掃除が終わった?笑わせないでくださいな。」
「シ、シンデレラ・・・ゆるして・・・」
青ざめる姉にシンデレラは笑顔を向け
「使えないわね。死になさいこのゴミ虫♪」
悪逆王女シンデレラ。
王子様から招待状が送られてくるのは
まだ、もう少し先のことでした。