短い夢「文」
□お題
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夏バテ注意報
「あっちぃぃいいいぃいい〜〜。」
ダラリダラリとだらしなく机につっぷして文句を言うソウマの横には山のように書類が積み上げてある。
「どれもこれも重要書類とは世の中なんて図々しい。」
季節特有の気候や世の中の図々しさにブツブツ言ってもどうこうなるわけでもなければ書類が減るわけでもなく。
止まったペンを恨めしそうに見つめてポイッとほうり捨てる。
「ユ〜マァ〜。ねぇユ〜マァ。アイスコーヒーいれて〜。」
ソファーの背もたれの向こうにいるはずの少年に気晴らしの休憩アイテムを注文。
が、しかし。
「・・・おりょ?」
聞こえてこない拒否の声。
不審に思ってソファーに歩み寄ってみると
「あ・・・つい・・・・ (。 。|||)」
「げ。」
完全にダウンしたユウマがうつぶせに寝転がっていて流石に良心(自分にそんな物があることに軽く驚き)が痛む。
「あ〜。えっと。冷水でもかけてあげようか?」
「何故かける。」
「楽しそうだから。」
「だと思った。」
にっこり告げるソウマに眩暈を強めながらため息をつくと
『ぴぴぴぴっぴぴぴぴっ』
「あ、熱はかってたんだ?」
どれどれとデジタル画面に映し出された数字を見てみれば
38:9
「夏バテ・・・だね。」
「死ぬ・・・。」
こんな弱気なユウマは初めてみた。
夏バテは栄養をとればいいと言うが、夏バテ患者にドンドン食えとは非情な言葉だ。
「なんなら食べれそう?」
「氷。」
「栄養ないっつうの。」
「カキ氷。」
「砕いただけ〜。」
夏バテでもウザさ100倍vV
「しょうがねぇなあもう。ちょっと待ってな。」
〜〜〜数分後〜〜〜
「じゃ〜ん。手作り『ひんやりティラミス☆』」
かくして、ソウマの気遣いのもとユウマの夏バテは数日で治った。
ところが。
「死・・・ぬ・・・。」
「今度はおまえか。」
「ゆ・・・ま・・・助け・・。」
38:9
ピッタリ同じ。ソウマ夏バテ。
「しょうがないからティラミスでも。」
「やめてぇーー!!!まぢやめてーーー!!死にたくないーーー!!!」
「安心しろ。なんとなく分かる。」
「卵すらまともに割れたためしがねぇだろ・・・!」
夏バテ注意報。
キッチンから聞こえてくる破壊音に
来年の夏は本当に気をつけようと
心に誓うソウマでした。