Ruka*'s Books

□はにーどろっぷす。
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《机の上の金色の小瓶》


ふわふわと目の前で揺れる柔らかそうな茶髪。
心なしか甘いにおいがする。


誘われるように、獄寺は手を伸ばした。

あと5センチ・・・ぼんやりとそう思った時、はたと我に返った獄寺は素早く手を引っ込める。

その直後、前を歩いていた綱吉が振り返った。




ー危なかった。



「獄寺君、どうかした?」



綱吉が首を傾げて獄寺を覗き込んでいた。


獄寺は驚いて目を見開く

心の中で呟いたはずだったが、口に出ていたのだろうか



何も言わない獄寺に綱吉は眉を潜めながら続けた


「今日はなんか元気ないみたいだから。あんまり喋らないし・・・」




あぁ、そうか。と合点がいく。



確かにそうなのだ。


いつもなら獄寺は綱吉が呆れる程よく喋る。



ー十代目が自分を心配してくださっている。




こんな自分のことを。




ー嬉しい。




嬉しい・・・が今日の獄寺は素直に喜べなかった。



獄寺は同性でしかもボスである綱吉に好意を抱いている。


それも異常な程に。



自分でも度を過ぎていると分かっている。


けれど彼を目の前にすると感情が爆発して自分でも止められなくなる。

だが気付かれてはいけない想い。
感情をストレートに表す獄寺にとって、気持ちを隠すことはなかなかの重労働だった。

そしてそれはプレッシャーとなりストレスとなって獄寺にのしかかってくる。

限界が近づいていることを獄寺は感じていた。

日に日に頭の回転が遅くなり、意識が朦朧とすることが多くなってきているからだ。



何か言わなければ・・・

安心させなければ

右腕らしい言葉・・・

自然な言葉を・・・



考えれば考えるほど何を言えばいいのか分からない。

前まではどう言っていたんだ・・・?

どうすれば前みたいに自然に接することが・・・



そんなことばかりが頭の中でぐるぐるとまわっている。

今日は特に、頭の回りが遅い。


「あぁ・・・えぇと・・・あの、・・・いえ。何でもないです。」


結局、それだけ言った後は黙ることになってしまった。


ーダメだ・・・


どうして上手く言えないんだ・・・




十代目にこれ以上迷惑をかける訳には・・・



せめて笑顔だけでも、と精一杯笑ってみせる。



それを見て綱吉も無理しないでね、と微笑む。



綱吉が再び前を向いて歩きだしたことに獄寺は安堵の息をつく。








笑顔が余計綱吉を心配させているとも知らず。
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