呪術者の楔

□二章:玖薙の後継者候補
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「お前は、やらなければならないことがある。次期玖薙家当主としてな。」




おじいちゃんにそう言われたのは、僅か三日前のことだった。
初めは何がなんだか分からなかった私は、おじいちゃんに意味を聞いた。




「清音はこの玖薙の血縁だというのは分かっているな?そのため、見の才を持っていることも。」
「・・・うん。」
「それは玖薙の力の一部に過ぎない。玖薙には・・・人ならざる力が伝っているのだ、太古昔からな。」




おじいちゃんはふと目線を下げた。
何かを思い返すように。



「・・・ねぇ、玖薙って一体なんなの?私が当主になるなんて、聞いてない!」




非現実的なことは、もうこの際認める。
けれど、何も分からないままでは納得がいかない。




「玖薙とは、呪術を遣える姓のひとつ。お前がこの当主となることは、お前の母さんが反対しているがな。」



おじいちゃんは眉間に皺をよせて、瞳を頑なに閉じた。



「そんな・・・!だったら・・・ッ」



私は突然のことに、泣き入りそうな声を出しながら、おじいちゃんの頑固な表情に口を噤んだ。




「だが、清音しか後継者はおらんのだ。」
「だって・・・おじいちゃんの次にここの当主になるんだとしたら、お母さんのはずでしょ?」
「清音の母さんは後継者にはなれない。・・・いや違うな、その権利を捨てたんだ。」
「・・・え?」




初めて聞くことに、私は耳を疑った。

何でも私のお母さんは、本当は玖薙の当主になる筈だったらしい。
しかし十五歳になる前にこの家に嫌気がさし、何年間か家出をしてしまったらしい。

当主就任の儀は、十五歳で行わなければならなかったから、もうお母さんには当主になることは不可能なのだ。




「だから、私?」
「あぁ・・・お前しかいない。」




別に、当主になることが特別嫌なわけではない。
今まで話を聞いて、ある程度状況は飲み込めてはいる。
けど、あまりにも突然ではないか。



「前から教えておくべきだったな。すまなかった。」
「・・・。」



私は口を噤んだ。
膝の上で拳を握り締めて、必死に考える。







 
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