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□地の果てまでも、共に
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「お前、新撰組の原田の女だな?」
「えっ」



声をかけられて振り向くと、見知らぬ男が此方を睨んでいた。
移動の最中、森の中で一人でいたのが災いした。
原田はこの付近に敵が居ないか様子を探りに行ったので、傍に居ない。
殺気を放っている男の様子に、千鶴は本能的な危険を察知する。



・・・どうしよう。



下手に嘘をついても相手の神経を逆なでするだけだ。・・・かと言って本当の事を言えば命はないのかもしれない。

どうしればいいのか考えているうちに男が焦れたのか、声を張り上げる。



「どうなんだ!?答えろ!」
「っ・・・」



大声に吃驚して肩をすくませる千鶴だったが、ふと気付く。
問答無用で斬りかかってこなかった上にこの期に及んで事実関係を確認しようとしている所を見ると、相手は本当に「雪村千鶴」の容姿をあまり知らないのかもしれない。


とぼけられる可能性もある。
そう気付いた千鶴だったが、同時に彼女の中で別の想いも生まれる。

原田左之助とは無関係だと・・・・・・ったったのその一言が。




千鶴にはどうしても、言えなかった。









 
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