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□愛の自覚
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最近、よく視線を感じる。




今もそうだ。

さっきから見られている。気のせいでは無い。
どうしようかと一瞬考え、深くため息をついてから相手に声をかけた。



「・・・・・・・何か用か、千鶴」
「えっ」




声をかけられた相手は、戸惑った声を上げた。
分からないのは自分の方だと言いたげな不機嫌な表情で、斎藤は言葉を綴る。



「ここのところ、特に何かあるわけでもないのに俺のことをじっと見ている気がするんだが、気の所為か」
「ええっ!?・・・・・・いえ、あの、そういうわけじゃ・・・・」


驚きつつも、否定せずただ狼狽する様子を見て、斎藤は自分の予想が外れていないことを確かめる。千鶴は滅多な事でない限り、嘘は言わない子だ。彼女のそういった性分を分かっている斎藤は、千鶴を安心させるように小さく笑った。




「責めてるわけじゃない。ただ、話せる理由なら話してほしい」



斎藤が落ち着いた口調で諭すと、千鶴は観念したのかほっと息をついたあと、頬を朱に染めながらゆっくりと話しだした。


「斎藤さんって、いつでも落ち着いてますよね」
「まあ、そうだな」




自分がそれほどできた人間だとは思っていないが、土方に仕事を頼まれたりする事も多かったので、自分で自分に冷静になるよう言い聞かせながら生きてきたのは否定できない。
勿論、性格的なものも大きいが。







 
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