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□猫と沖田
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(丁度良かったな)

無邪気に笑う彼女を見ていると自分まで癒されるようで、原田も思わず顔を綻ばせた。
子猫がいるなら母猫は警戒心が強いだろうと思い、二人は暫く遠くからその光景を眺めていた。
すると、不意に一匹の子猫が千鶴に近づいてきた。


「え?」
「おっ。気に入られたみたいだな」
「そうなん・・・ですか?」
「別にいじめるわけじゃないんだし。近づいてきたってことは、脈ありってことかもしれないぞ」
「じゃあ、ちょっとだけ・・・」


千鶴は恐る恐る子猫に近づいていく。
すると、猫は思いのほかすんなりと千鶴の手を受け入れてくれた。


ふわふわの毛並みが、気持ちいい。


「わあ・・・」
「へえ〜。こいつだけ警戒心が薄いっていうか・・・・気まぐれみたいだな」
「そうですね。まるで沖田さんみたい」
「総司?」

この場にいない第三者の名前を聞いて、原田が首をかしげた。

「はい。沖田さんって、気まぐれでよくわからない所があるから・・・・猫みたいだなって、たまに」
「ああ、確かに言われてみれば・・・・・そっくりだな」


千鶴の言葉に相槌を打つと、原田は猫を見ながら笑う。


「あいつもこれぐらい可愛げがあればなあ・・・・・・」
「ふふ、そうですね」
「そうだ。いっそこの子猫、総司って名前にしてみるか」
「え?」

千鶴は猫の頭を撫でながら、原田の言葉に顔をあげた。


「何かの縁だ、総司って呼んで可愛がってやれよ。偶になら会いにこれるだろ」
「え?でも・・・・」


いくらなんでもそれは・・・・・・・と言いかけて、背後から得体のしれない殺気を感じた。
まさか、と思うが時すでに遅し。



「・・・・・・・・ふうん。二人で楽しそうな話をしてるみたいだね」

微笑みながら現れたのは、渦中の人物「沖田総司」本人だった。
彼は気配を消していたらしく、油断していたとはいえ流石の原田も驚いてうまく言葉が出てこなかった。




 
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