南国娘(PAPUWA)
□始まり
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シンとした夜の浜辺に一つの影。
影の主はひんやりとした砂浜に大の字に寝転がり、空を見上げていた。
「綺麗…」
思わず目を覆ってしまいそうになる程目映い満天の星。
感嘆の息を洩らし、そっと瞳を閉じる。
聴こえてくるのは波の音だけ。
耳を擽る心地良い波音は、少しずつ、だが確実に夢の中へと彼女を誘う。
・・・
「起きなはれ、こないな場所で眠ってはったら危ないどすえ」
夢か現か、誰のものとも知れない柔らかく響く丁寧な声音。
(わかってる。わかってるけど、目が開かないの。もう少しだけこのまま…)
「もしかして気ィを失ってはるんでっしゃろか。でもこのアラシヤマが来たからにはもう大丈夫どす。今わてが助けたるさかい、安心して身ィを任せておくれやす」
優雅に京言葉を操る男は、人口呼吸と言う名の接吻をしようと上半身を屈める。
「…………」
「…………」
唇が触れる寸前、幸か不幸か目が覚めた。
暫しそのままの状態で見つめ合う二人。
(男の人、だよね)
(新しく流れついたお友達がまさか女のお人とは…)
自分を見つめる綺麗な瞳にお互い時間が経つのも忘れて目を奪われる。