一輪の華(銀魂)
□緋那
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暗い森を一人彷徨う。
グルルルル…
微かに聴こえた獣の唸り声にハッとし、周りを見渡した。
あちこちに光る不気味な眼。
いつの間にか野犬の群れに囲まれていた。
じりじりと近づいてくる獣達。
恐怖で竦む足。
飛び掛かられる瞬間、強く目を瞑った。
キャインキャイン
何が、起きているのだろう。
覚悟していた衝撃が無いばかりか、野犬達は怯えたような鳴き声をあげている。
固く閉じた瞼を恐る恐る開くと、自分を見つめる温かな瞳と目が合った。
「もう大丈夫だ」
「お前、一人か?」
「…そうか」
“俺の所に来い”
そう言ってあの人は、見ず知らずの小汚いガキに手を差し伸べた。
・・・
緋那は穏やかな気分で目を覚ます。
緋那
(またあの夢か…)
あれから十数年。
俺は、あの人の役に立てているのだろうか。