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□抜きし刀は
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掌を空にかざしてみたら、

指の隙間から光がもれてくる



なんていうことはなく、俺の目に映ったのは薄汚い血で染まった自分の手の甲だけだった


戦いも一応一段落したようで、周りには仲間敵関係なくすっかり冷たくなってしまった骸がそこかしこに転がっていて足の踏み場もないほどだ。血液特有の生臭い匂いはとても強いものであり、鼻が最早匂いを感知しない。



「白夜叉……ねぇ…」


ふと視線を自分の身辺にずらすと

白夜叉と呼ばれる所以の白い羽織は鈍い朱の斑点がつき、ひらひらと風にたなびいている。


いつもの癖で銀色の天パの髪の毛をくしゃくしゃとやってみる、固まっておりいつもよりも指通りが悪いようだ。


手をだらんと下げる、すると言いようのない脱力感がこみ上げてくる。




「俺は、


はっきり口にすると自分の中で何かが崩れ落ちてしまいそうな気がする





「俺はっ、




大切な者たちは、この薄汚れた手の隙間からいとも簡単にこぼれ落ちていった。



「白夜叉なんかじゃ……」




出来るなら
この俺の狡い両手を許して欲しい
出来るなら
この俺の弱い両手を許して欲しい
この俺の汚い両手を美しいなどと言わないで欲しい


この俺が守れたものなど何一つも有りはしなかったのだから



もう一度空に手を掲げてみると、それに呼応するなのように

一粒、二粒、、と
黒い空から雨粒が落ちてくる



手に雨粒が落ちる度に少しずつ汚れが落ちていくようだ



ジャリと石を踏む音がして、
まだ地面を踏めるところも残っていたんだなぁ、などと呑気な事を考えながらも、体はすっかり戦いに慣れてしまったようで、刀に手を添え素早く振り向く



「銀時、陣営に戻るぞ。」


「なんだヅラか。」


「ヅラじゃない!桂だ。後なんだとはなんだ!なんだとは!」


「はいはい、わーかったっての!うるせぇなぁ」


「早く来るのだぞ。」



呑気そうに手を振り去っていく
ヅラの手もまた、
血に染まっていた



遠くから白夜叉を呼ぶ声が聞こえる



しょうがねぇなぁ…



白夜叉の特徴である銀髪をくしゃくしゃとやってみると
さっきよりは指通りが良いようである、



雨に濡れて少し膨張した、愛おしくも憎らしいこの髪の毛をポンと叩いて



残酷なこの風景を踏み越えていく事にしよう





さぁ行こうか



地獄の果てまでお付き合いさせていただきますよ、


『白夜叉』さんよぉ








まだまた俺は負けてはいられないようだ
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